6/5(火)、大学院の講座「自治体行政と危機管理」にて、熊本県地震発生時に同県総務部長であられた木村敬さん(現 内閣府地方分権改革推進室参事官事務代理)を講師にお招きし、「熊本地震から何を学び取るか」とのテーマで、お話を伺いました。 要点は以下の通りです。
○後から見えてきた現場と行政の課題
・人命救助と避難者支援の両立はとても難しい。まず優先すべきは人命救助であり、熊本地震ではかなり成功した。
・避難所運営のノウハウ蓄積や事前準備は非常に重要。優秀な職員ほど避難所支援に奔走して疲弊した。運営が上手くいった避難所には、自治会などの地域コミュニティが存在していた。避難者参加型の避難所運営へ発想を転換すべき。
・国から優先して派遣されるべきは出身者ではなく、(その土地での勤務などの)経験者。
・危機における職員力を平時にいかにして醸成するか。日頃の掌握業務ではないことにも取り組む能力、すなわち複数業務の習得を勧める。
・ボランティアと県外からの応援職員をうまく裁けなかった。“本来は応援・支援の手が多過ぎるということはなく、余ることはあり得ない”。受援体制の構築が不十分であった。

○現場での実体験に基づく評価・反省・気付き
・ヘリコプターで被災地に来た人はゼロ。ヘリコプターはもっぱら被災現場の情報収集に有効活用された。
・被災者の救出において、緊急消防援助隊と県内消防本部隊員の活躍が目覚ましかった。本震発生後3日間で救出できる人のほぼすべてを救出できた(4日後以降に発見された死者は3名)
前震発生日に救出作業に投入された人数は、緊急消防援助隊594名、県内消防本部270名、警察1153名、自衛隊1800名。自衛隊は当日のうちの投入は限定的で、翌日に15000名に急増。

・災害対策本部はメディアの出入りも自由、情報も公平に公開、オープンなものとした。不要な手続きが省かれ、成功した。
・被災自治体毎に支援する県を割り当てた(西原村←佐賀県、宇土市←長崎県など)。各県の市町村からの支援もその割り当てに沿って実施され、効率化が図られた。
・間仕切りが設置される前の避難所では、屋内外を問わず、自らが確保した場所を絶対に手放そうとしない。外出時は物を、人によっては汚物を置いてまで守ろうとする。

○お話の中で最も印象に残ったのは以下の2点。
・災害発生時の役所の初期対応において、通常業務の一切を注視し、災害対応にあたる部署や人を予め明確に決めておくべき。指定される部署は担当業務の軽視として抵抗するが、短期的な優先順位の理解を求めるしかない。
・防災は他例から如何に学ぶかに尽きる!

“他例から学んだ”と真に言えるのは、今後、いざ、ことが起きた時に、今回の木村さんの経験談等々を活かせるかどうかである。

木村さん、ご多忙の中、現在のお仕事とはほぼ無関係の内容にも関わらず、質量ともに充実した資料をご用意いただき、貴重なお話をくださり、ありがとうございました。お話くださったことが無駄にならないよう、いざという時に備えます。