台風12号による目立った(二次)被害は今のところないようで、とりあえずとは言え安堵されてらっしゃる方は少なくないと思います。

以前から気になっておりました各市町村のハザードマップ作成上の想定雨量について調べてみました。地球温暖化などの影響によるとされる世界的な異常気象に、これまでの常識や基準に過度に頼らない方がよいとは言うものの、実際の過去最大雨量はどの程度で、想定条件とされる “50年に1度“や”100年に1度“とされる雨量との差はどの程度なのでしょう?

開成町のハザードマップは、酒匂川流域が355㎜/1日(100年に1度)、要定川が94.4㎜/1時間(50年に1回)、仙了川93.7㎜/1時間(50年に1回)の雨量を想定して作成されております。
一方、過去最大の雨量は、気象庁の観測地点のある小田原市の1976年以降のデータとなってしまいますが、238.5㎜/1日(2010/9/8)と想定条件の約7割程度でした(想定雨量は過去最大の雨量の1.5倍)。他に、200mm/1日を超えた日が3日ありました。(気象庁”過去の気象データ”はこちらから)

あくまで感覚的な話になってしまいますが、酒匂川流域の想定条件である”355㎜/1日”はやはり100年に1度くらいなのかなぁといった印象となります。ただ、先般の西日本豪雨にて愛媛県西予市でダム放流の是非と周知のタイミングが議論となりましたが、この開成町のハザードマップの場合も、丹沢湖の三保ダムの放流の影響までは反映されていないと思います。上流の雨量やダム放流の有無などにも十分注意し、行政は早め早めの情報収集と発信に努めなければなければならないことは、その西予市のケースから学ぶべき教訓と言えましょう。

他の地点の過去最大の雨量は、丹沢湖で495.5㎜/1日(2010/9/8)、箱根町528㎜/1日(2005/8/25)、横浜市287.2㎜/1日(1958/9/26)。同じ神奈川県内でも倍近い差がありました。

小田原市の酒匂川流域のハザードマップ(平成29年3月公表)ですが、開成町の酒匂川流域と異なり、530㎜/1日を想定条件に作成されておりました。以前は同じ355㎜/1日でしたが、平成27年の水防法との一部改正に伴い、「想定し得る最大規模の降雨によって氾濫した場合」に前提条件が見直されたようです。(小田原市HP上のファイルはこちらから)

浸水を警戒すべき区域が拡がり、且つより深い浸水への警戒を促すことから、“想定し得る最大規模の降雨”を前提にする方が望ましいと思える一方で、旧来の想定していた355㎜/1日程度の規模の雨量=過去最大の雨量への警戒が疎かにならないことも大事だと思います。

※次回に続きます。