「総務省はふるさと納税制度の抜本的な見直しを検討。寄付金に対する返礼品の費用割合が3割を超えたり、返礼品が地場産でない自治体への寄付を税優遇の対象から外す方針」と先週、各メディアが報じました。

○本来の趣旨
そもそもふるさと納税制度の”本来の趣旨”は何であったか?平成18年に構想を提唱した西川福井県知事は「地方間格差や過疎などにより、税収の減少に悩む自治体に対しての格差是正を推進するため」とされております。

総務省では、「税制を通じてふるさとへ貢献する仕組みとして導入された制度」とした上で、その”意義”を、
①納税者が寄附先を選択する制度であり、その使われ方を考えるきっかけとなる、
②生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であり、人を育て、自然を守り、地方の環境を育む支援になる、
③自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むことで、選んでもらうに相応しい、地域のあり方を考えるきっかけとなる、としております。

要は”故郷や応援したい地域の活性化に役立てる”というのが本来の趣旨で、副次的な効果として海外比遅れる”寄附文化の定着”も期待されていた節があります。いずれにせよ、当初は想定していなかった返礼品の送付が始まり、前述の意義③で”競争”を促してはいるものの、想定外の”返礼品競争”が激化する結果となりました。本来は使途を明確にしたクラウドファンディング型の寄附において、その内容を競って欲しいとの狙いがあったものと推測されます(活用事例はこちらの総務省HPから)。

○制度見直し
寄附側の関心が返礼品に過度に偏っていることは本来の趣旨から外れていることを意味しており、返礼割合にしても地場産以外の返礼品にしても、趣旨に見合うように見直すべきだと思います。

ふるさと納税=”寄附”による収入を経常的な支出に充てている自治体にとっては、資金繰りの問題が浮上する恐れがありますが、寄付はあくまで寄附であるとの位置づけに修正していくべきでしょう。

ただ一方で、返礼品の提供が地元企業の業績や雇用、地場産業の活性化にプラスになっていることは確かであり、この点に関しては主旨に沿う面もあると思います。行き過ぎは是正の必要はあるものの、地方経済の活性化の視点は引き続き重視して欲しいと願います。

地場産品の有無による格差も問題視されておりますが、原則はやはり地場産に限るべきかと思います。さもなくば、全国から人気商品を集める本末転倒な競争が続くことになりましょう。しかし、例えば飯館村のように地場産の品があっても提供できないという特別な状況に陥っている自治体には特例措置が必要でしょう。

○税流出の東京
今年度、ふるさと納税で控除される東京都の住民税は645億円、一部の特別区などから制度見直しを求める声があがっている。ただ、税収5兆円を超える都全体にしてみれば、現時点では影響は限定的な額とみられる上、企業本社の約2割、事業所の約3割が集まる東京が返礼品等で本気を出せば太刀打ちできないのは明らか。制度が見直されれば尚のこと、この問題は表面化しないものと思われます。

○開成町の実質的なふるさと納税額
過日の議会における町の説明では、昨年の寄付額は1億2000万円程度、返礼品やその他経費(送料・決済手数料等)を差し引いた実質で4700万円だったとのことです。人件費も勘案すればネットでの収入額はさらに少なくなりますが、とにかく有効に使っていただきたいと願うのみです。

クラウドファンディング型はこの10月から開始するとのことでした。一昨年の庁舎建て替えに関する説明会において、”調達手段の多様化と、町出身者を含む町外在住者の思いの受け皿として、新庁舎の何か一部分を寄付によって賄ってみては?”との提案というか質問をしました。どのような事業に採用されるか注目しております。

最期に、返礼割合の話に戻って、神奈川県内で9月時点で3割超は9市町。うち6市町が県西地区であることを今回初めて知りました。県西地区は、今後も県平均より著しい人口減少が予測されるなど厳しい環境下にあり、財政の先行きや財源の確保に真剣に取り組んでいることの表れと解釈します。現時点では見直しの意向なしとされておりますが、”税優遇なし”は受け入れ難いと思われ、今後の対応が気になるところであります。