「こども宅食」は子どもの貧困問題に取り組むNPOなど5団体と文京区の共同事業。その取り組む内容等について、文京区 成澤区長(明治大学公共政策大学院修了生)より直接お話を伺う機会を得ました。(ホームページはこちらから)

○概要
・返礼品なしのふるさと納税を財源にして、経済状況が食生活に影響する恐れのある家庭の子どもに対して、企業から提供された食品を配送するもの。
・就学支援を受ける約1000世帯と児童扶養手当を受給する約700世帯のうち、希望する世帯が対象。
・初年度の2017年度は希望者458世帯のすべてには対応しきれず、150世帯でスタート。今年度は申込みしたすべての433世帯に配送。
・2017年度にスタートし、2ケ月毎、3回実施。

○目的
・生活困窮を救うためではなく、”配送をきっかけに、子どもとその家庭を必要な支援につなげ、地域や社会からの孤立を防ぐため”。

○ふるさと納税額
・不特定多数の方からインターネット上で寄附を募る手法(ガバメント・クラウドファンディング)を利用。
・2017年度(7月以降)は2,343人から、8,225万円の寄附。今年度は8月末時点で約3,300万円。

○運営する団体
・(一社)RCF : パートナー企業の開拓。食品の調達。
・NPO KID’S DOOR : 食品の管理。ボランティアの募集。
・ココネット(株) : 食品の配送。配送スタッフによる見守り。
・NPO フローレンス : 申込み受付や利用者対応。
・キリン(株)や(株)永谷園、(株)ロッテなどパートナー団体19 : 食品の提供など。
・ボランティア : 食品の仕分けや梱包

○感想
区長曰く『主目的は経済的な支援ではなく、気軽に相談できる関係づくり』。経済的な支援額は世帯あたり平均で月3,700円とのことですが、以下の通り、まず利用者からアンケートへの回答があること自体が関係の改善を意味し、且つ”笑顔が増えた”や”学習意欲が増した”などの声が聞かれることで効果を実感されているとのことでした。
”返礼品なし”のふるさと納税を活用できている点や各種団体・企業との連携(”コレクティブ・インパクト”の実践)が見事になされている点は素晴らしいの一言です。

”子ども食堂の運営において、真に支援が必要な子どもに支援が届いているか不明”との声がこの事業の出発点であり、”配送”することによって、人の目を気にすることなく支援を受け易くしたことなど、支援者や利用者の現場の声に耳を傾け、実際に取り入れる姿勢にも学ぶべき点です。

同じことを開成町のような小規模自治体が取り組む場合、活動資金や食品の調達ができたとしても、その後の食品管理や配送、事業の評価などを企業や団体が請け負うに際し、貧困という社会課題の解決のためとはいえ最低限の効率性が求められ、相応の利用人数が必要になると予想されます。(文京区: 人口 約22万人、年少人口 約3万人。開成町:人口 約1万7千、年少人口 約3千)。ただ、近隣市町との連携によって克服できる可能性もあり、端から諦めてしまうには勿体ない理想的な仕組みと思われます。

また、立場の異なる企業や団体が、それぞれの強みを活かして社会課題の解決に取り組む”コレクティブ・インパクト”という仕組みも、貧困対策に限らず応用が可能と考えられる意味でも、非常に参考になる取り組みです。事業が始まってまだ1年強、今後の推移にも注目していきたい。