11/11(日)、シンポジウム 「酒匂川・鮎沢川の治山・治水と国の役割を考える」に出席しました。主催は「富士山と酒匂川流域 噴火と減災を考える会」、治山・治水の現状と課題を検討し、望ましい整備や管理のあり方を再検討すべきとの主張です。2016年の発会以降、数多くの後援会や学習会、視察を重ね、シンポジウムや近隣市町へのヒアリングも実施。発会時に策定した3カ年活動計画通り、来年2019年には(県や国に対する?)具体的な提言をまとめ、提出の予定とのことです。今回のシンポジウムもその提言に向けた活動の一環です。

この日はまず(一社)砂防・地滑り技術センター 南理事長の講演。今年発生した北海道胆振東部地震や西日本豪雨災害、中津市耶馬渓での斜面崩落などの災害事例を用いて、それらの原因や特徴について説明いただき、富士山の噴火にも備えるべきと唱えられました。

また、強調されたのが箱根外輪山の脆弱性でした。具体的には、過去の噴火により堆積したスコリア層であることに加え、ほとんどが人工林か二次林(※1)であるため土砂災害のリスクが高いとの見方でした。加藤小田原市長も対策の必要性があることを認識したと繰り返し述べられてました。

※1:
人工林~人為的につくられた森林で、主に植林による(神奈川ではスギまたはヒノキが多い)
二次林~災害や人為によって一度破壊(あるいは改変)され、その後回復途上にある森林。

神奈川県県西土木事務所 横溝所長によるプレゼンでは酒匂川総合土砂管理プランについて説明いただきました。(同プランの詳細はこちらの県ホームページから)平成25~29年度の第1段階では、中下流で堆積土砂の除去と樹木伐採を実施し、平成22年9月の台風9号による土砂環境変化からの復旧は概ね果たされた、との説明でした。小田原市自治会総連合会 会長から異論が出されましたが、“当該管理プラン上の計画は達成された“との主旨と解釈しました。

ただ、一方で平成30年度から概ね5年間の第2段階においても、平成29年度以降に堆積した土砂などに引き続き対応する必要があり、土砂除去と樹木伐採が継続して実施される方針が示されました。

減災への対策として、ハードでは”危機管理型水位計(計測器を河川に入れるタイプや橋梁に設置し電波や超音波で河川に触れずに計測するタイプ)の設置等、ソフトでは緊急速報メールを利用した洪水情報のプッシュ型配信を推進する旨、説明がありました(詳しくはこちらから)。
前者に関しては、昨年の九州北部豪雨災害などで“水位計のない箇所において、河川の状況把握が困難だったために避難の判断が遅れたことを教訓として、新たに開発されたもので、コストは従来型の1/15と著しく低下し、その普及が期待できそうです。

全体を通しての感想。
・堤防の増強や護岸の整備などハード対策には時間もコストもかかるとの印象を新たにしました。しかし、ソフト対策の充実を図ると同時に、命を守るためにそのハード対策の必要性を管理者に訴え続けるしかありません。酒匂川流域に関しては九十間土手とサイクリングコースの間=霞堤の洪水リスクが最も高く、優先して対策が求められると考えられます。

・洪水情報のプッシュ型配信は非常に有効だと考えられます。避難勧告や指示の決定に際しては、雨雲の推移などから先を読んだ人間の判断によるものと、河川水位の客観データによるものの2種類があってよいと思いますが、客観データは人間が判断を躊躇し対応が遅れるリスクを軽減できる可能性があり、有用だと考えます。自らスマホを片手に水位情報をチェックし続けることも可能ですが、プッシュ型であればその負担も軽減されましょう。

“水位”は遅行性のリスク(急激な上昇時に、避難行動が最新の情報に遅れをとるリスクとの意)はあるものの、短時間の雨量のみならず、累積した雨量やダム放流、合流する河川から影響などすべてを織り込んだ最終的に最も有用な情報と考えます。