「廃校体育館、マイナス795万円で売却へ」、12/27付け日経新聞はじめ各紙が報じております。埼玉県深谷市が廃校となった小学校の体育館と敷地を売却するもので、落札者が解体費用を負担することが条件ではあるものの、自治体の資産売却において初めてマイナス価格での入札が成立したとのことです。(オンラインニュースはこちらから)

深谷市は平成18年に(旧)深谷市・岡部町・川本町・花園町が合併して誕生。深谷ねぎで有名な農業が盛んな市、農業出荷高は県内1位、全国15位。面積138㎢。人口は約14万4千人、合併当時の約14万8千人から緩やかながらも減少中です。

入札の詳細は以下の通りです(詳しくはこちらの市HP から)
・入札対象: 旧中瀬小学校体育館(鉄骨造・平屋建。解体除去が条件)、敷地1,505㎡(宅地)
・予定価格:-1,340万円(注: 予定価格は更地評価額から建物解体撤去費を控除した額を設定)

市では過去に2度入札にかけたが(予定価格:+1,782万円)、応札はなし。今回、体育館の解体費用が土地評価額を上回ることを考慮し、且つ落札後の用途を住宅に限定し、税収増が見込めるとの判断から“マイナスの予定価格”を設定。結果として、市内の食品加工会社マルコーフーズ(株)の代表者が落札しました。(民間への無償譲渡になるため、最終的な契約には議会の議決が必要とのこと)

“全国初”であることから当然“先駆的な取り組み”です。深谷市の人口減少のペース(合併後▲0.25%)は、全国平均(平成22年と平成27年の国勢調査 ▲0.8%)を下回っているものの、将来的な人口減少・税収減への危機意識が強く、公有地が長期間不稼働のまま放置される事態を先んじて回避する手を打った、との印象です。

期待通りに住宅(3人家族×6戸)が売れ、税収(固定資産税・住民税などで10年間で1,700万円)が増加する保証はありませんが、不稼働資産の維持管理コストがなくなることや、(地元の)民間企業の資本と知恵と思いを活用せんとする狙いは評価されるべき、と考えます。

同様の課題を抱える他の自治体も追随する可能性があると思われますが、人口減少や土地価格下落の程度が著しい地域では例え“マイナス価格”であっても、既に買い手が表れない状況に至っている恐れもあろうかと思います。

右肩上がりの時代は、公有地は拡大すべきであったのでしょうが、勿論地域によるところはあるものの、ほぼ日本全域でパラダイムシフトが起きつつあることを強く認識し、早々に自分事としてとらえ、先を見据えた行動が求められる!と、この事例を受けてあらためて感じた次第です。