前回、投票率を上げるための各地方自治体による取り組みを紹介いたしました。
今回は、国家レベルでの話として、”義務投票制”などについて述べさせていただきます。

義務投票制とは文字通り、選挙への投票を法律や憲法で義務化することです。世界で約30ケ国が採用しているようです。違反した場合の罰則の有無は国によってまちまちです。

賛成派の意見としては、「幅広い層が投票権を行使することになり、投票率が上がるとともに、当選者の得票基盤や民主主義の基盤が強化される」、「政治的無関心層が投票権を行使することによって、政治への関心を高める啓発効果が期待できる」、「候補者や政党は有権者すべてを対象にした政策をうったえる必要があり、公平な政治が実現される。概して投票率の高い高齢者や特定の団体に有利とされる政策などを打ち出す意味が乏しくなる」などです。

反対派の意見としては、「選挙権という権利が、刑事罰や行政上の制裁まで科すような制度を正当化するとは考え難い」、「投票しない自由を侵害する」、「罰金を徴収するための行政手続きにコストを要する」などです。

現実的に、義務投票制を採用し、正当な理由なき棄権など違反に該当した場合に罰金などの罰則がある国では概して投票率が高いです。
先進国ではオーストラリア(2017年時点での直近の投票率 91%。罰金20AUD≒1600円)、シンガポール(93%。罰則:選挙人名簿からの抹消)、ベルギー(89%。罰則:初回は5〜10ユーロの罰金→2回目以降は10〜25ユーロの罰金。15年の間に4回以上投票を怠ると、選挙権を10年間失い、公職に就けなくなる)など。義務化し且つ罰則有りは、投票率を上げる効果が確実にあると言えます。

一方、罰則なしの国の投票率にはばらつきがあります。イタリアは75%と比較的高いですが、メキシコは47%、ポルトガルも55%と日本のそれと同程度でした。

日本では、この義務投票制に関する議論はこれまでもあまりされておらず、今後も議論が高まりそうな気配は感じられません。投票率を上げるための対策としては、前述の通り“利便性の向上”に偏っている感は否めません。後述するような抜本的な改革でもなされない限り、少なくとも市町村レベルでの試みの効果は限定的なものにとどまるものとみざるを得ません。

抜本的な改革とは、例えば、若者の政治や選挙への関心を高める効果がありそうなものとして、①世代別選挙区制:有権者の人口構成比率に応じて世代毎の議席数を配分するもの、②ドメイン投票制:子どもにも選挙権を付与し、親が子どもの代理として投票するもの、③余命投票制:平均余命に応じて、世代毎の議席数を配分するもの、など。それぞれ一長一短があるとされるものの、“若者の関心を高める一定の効果”は認められそうです。国として低投票率や若者の関心の低さを真に問題視するのではあれば、変革にたとえ時間はかかろうとも、より真剣な議論だけでも行うべきではないかと思います。

また、被選挙権に関しても、米国の下院25歳・上院30歳に歩調を合わせているものとも推測されますが、衆議院議員や都道府県の議会議員、市町村の議会議員、市町村長が満25歳以上、参議院議員と都道府県知事が満30歳以上のままです。欧州諸国やオーストラリア、中国が18歳まで引き下げていること、日本でも選挙権が18歳以上までに引き下げられたことも踏まえれば、若者の関心を呼び戻すためにも、被選挙権も引き下げが検討されてもよいと考えます。皆さんはどのようにお考えでしょうか。