大学院講座「自治体行政と危機管理」の12回目の講義にて危機管理を下支えする財政制度について学びました。

激甚災害制度の概要や、東日本大震災の復旧・復興事業において実施された財政的支援の詳細についてひと通り説明を受けた後、東日本大震災以降に拡充が図られた“防災地域づくりに関わる支援制度”について話がありました。

○緊急防災・減災事業債
そのひとつが“緊急防災・減災事業債制度”。対象事業は、(1)災害に強いまちづくりのための事業、(2)災害に迅速に対応するための情報網の構築、(3)地域の防災力を強化するための消防防災施設の整備など。

地方債の発行額100%を当該事業に充当でき、70%が交付税措置(交付税の計算に際して需要額に加えられること)される。現行の制度の期限は平成32年度まで。

対象事業の例で目を引いたのが、“指定避難所における避難者の生活環境の改善のための施設(空調・WiFi等)の整備など”との項目。“空調”も“Wi-Fi”もいまや避難所に不可欠の装備であり、補助(この場合は交付税措置)の有無にかかわらず整備すべきだと思われます。

○空調装置の整備
まず空調ですが、今月の記録的猛暑において熱中症対策から学校の教室や体育館等にエアコン設置の必要性があらためて叫ばれており、異論のないところでしょう。教室や体育館が避難所として使用される時も事情はまったく同じであり、二次災害を発生させないためにも予めの対応が不可欠であると考えます。

ただ、やはり問題はコストです。教室に関しては、他市の例などを参考にすると、初期費用は1教室あたりおおよそ100万円前後、ランニングコストは1教室あたりおおよそ10万円前後/年でしょうか。補助金も勘案すれば、どの自治体でも対応可能な範囲と思われます。

しかし、体育館については、初期投資だけで数千万円規模となりそうであり、財政がひっ迫する中、どの自治体でも即対応できる額ではなさそうです。全国の公立学校(幼・小・中・高校他。平成29年4月時点)の空調設備の設置率が、教室では41.7%であるのに対して、体育館は1.2%にとどまっていることは、これまで必要性を感じていなかったといこともあると思いますが、予算制約に因るところも多分にありそうです。ただ、少なくとも可動式の冷風機等の準備は不可欠と思われ、本格的な空調設備は複数年度の予算編成の中で計画性をもって対応するのが現実的なのかもしれません。

○公共LANの整備
Wi-Fi、携帯電話・スマホが我々の生活に密着し、なくてはならないものになった今、災害時への備え不可欠な時代となりました。特に災害発生時は携帯電話会社が提供する電波がパンクする恐れがあり、行政の役割として公共LANの整備は優先度が高いと考えます。先日の西日本豪雨災害においてはドコモ、ソフトバンク、auは電波を無料開放しましたが、災害の程度等によっては今後も必ず保証されるとは限りません。

平常時においても公共施設の利用を促し、人が集まる交流の場として有効活用いただくためにも、インターネット環境の整備は不可欠なアイテムだと考えます。

総務省も「防災等に資するWi-Fi環境の整備計画」の中で全国で3万か所(含む整備済)を目標に掲げ、整備を推進しています(総務省HPはこちらから)。この機をとらえる方が賢明かと思います。コストに関して、ある県では初期費用として1施設あたり200万円の予算を計上しておりましたが、そこまではしないと思われますがいかがでしょうか。