日経グローカルセミナーにて、兵庫県小野市の蓬莱市長のお話を伺いました。小野市は神戸市の北西に位置する面積93㎢・人口5万弱、その昔は”そろばんのまち”として名を馳せた市。合計特殊出生率と年少人口比率が県下1位。経常収支比率 89.4%、財政力指数 0.68と財政的にも安定。

蓬莱務市長は、民間企業に30年間勤務(営業や生産管理・経理・購買・総務・人事などを担当)の後、平成11年に市長選に立候補し当選。以降4回無投票当選、現在5期目。民間出身、52歳で首長選挙に初挑戦という点で、今の私が同じ境遇にあるため、非常に強い関心をもって拝聴しました。

『中国山東省蓬莱市の出身。大阪名物ぶたまんを販売する蓬莱511を経営』と自己紹介され、驚いたのも束の間、『ウソです。政治家はウソばかりなので、それを見抜く洞察力が必要です!』とのっけから完全にやられました。講演内容はさながら大学の授業の様でした。実際に取り組まれている住民・地域向けの事業に関する話は少なく、民間の感覚を最大限取り入れた”行政の運営手法”に関する話が多かったです。テーマが「地方都市はどう生き抜くか」、協働とか連携の類を想定していましたので、意外感がありました。印象に残ったお話を備忘録としても簡単にまとめます。

○「官と民の決を定的な違い」4つ
①“成果と報酬が連動しない社会”。これが諸悪の根源!とバサッと切り捨てた上で、②“画一的横並びの仲良しクラブ”、③“顧客満足度志向の欠如”、④“前例踏襲型の施策遂行”が違いと指摘。そう思っていてもなかなか公の場では言えないものですが、歯に衣着せぬことばでストレートにきました!二味くらい違う首長さんでした。

○「行政も経営」
一貫した基本理念が「行政も経営」。より高度で、より高品質のサービスをいかに低コストで提供するかを追求する!
○「報連相シート」
業務上のミス・トラブル、行政関連のメディア情報、他の自治体の情報などを市長まで報告。年間2000件以上。システムで情報を一元管理、全職員がアクセス可能。狙いは職員の問題意識の醸成。

○「多様な広聴」
市民からの要望・苦情、議員の意見などをすべて文書で市長まで報告。市長はすべてに目を通し、指示を出す。受付から回答までの時間も管理。

○「成果と報酬の連動」
成果を勤勉手当に反映させ、格差をつける。支給率は“特に優秀”は121.5、優秀98.5、良好87.0、良好未満73.0。因みに平成30年6月期の”特に優秀”は管理職で1人/67人、一般職で9人/244人。
○「入札制度改革」
予定価格や指名業者名、入札結果を事後に公表。権限の集中を避けるため、入札関連の権限を副市長に委任。

○「市議会の政務活動費を廃止」
必要な経費は議員が都度申請、議員自らが審査。予備費から拠出する。議員にインセンティブが働く。

「行政も経営」、正におっしゃる通りです。首長には組織のマネジメント能力が求められ、そして問われることになります。職員のやる気をいかに引き出し、実力をいかにして発揮してもらうかは手腕次第。そして、住民の福祉の向上と満足度の上昇という行政の目標に向かって、組織がいかにひとつにまとまることができるか。

蓬莱市政では、民間以上に民間の発想と制度が導入されていました。いたるところに、顧客志向や問題解決能力の育成、成果重視につながる仕組み・仕掛けが組み込まれいました。要望や苦情をすべて市長に報告、市長はそのすべてに目を通し指示を与えていること、これはなかなか真似できることではなさそうです。そして何より、それぞれの取り組みに必ず目的・目標を設定し、周知徹底していることが蓬莱流経営の真髄だと思います。これは当然わたしも目指すところです!

まとめの言葉は、
『政策決定は市長の責任。行政においてはトップダウンの政策決定と遂行が効率的な組織運営のカギ』。
『“地方都市はどう生きるか”の答えはそれぞれの自治体にしか存在しない。熱意・創意・誠意を絶えず持ち続け、その道のりを示すことが首長に課せられた使命』でした。

とても重い言葉です。