○自然災害による経済的被害
「6月に起きた大阪北部地震の被害額は最大で1.2兆円」、神戸大らが推計結果を公表しました(報道内容はこちらから)。
因みに近年の大地震に伴う経済的被害額は、東日本大震災 16.9兆円(内閣府推計値)、阪神・淡路大震災 9.9兆円(兵庫県推計値)、熊本地震 最大4.6兆円(内閣府)。今月発生した胆振東部地震に関しては、「熊本地震の被害額を超える可能性がある」との推測記事も目にしました。
7月の豪雨や台風20号・21号による被害額はまだ推計されておりませんが、今年は自然災害が相次ぎ、経済的な被害総額は阪神・淡路大震災を超えてしまう可能性もありそうです。
あらためまして、被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。また、今日時点で西日本6府県と北海道ではそれぞれ約1400名の方が避難所生活を余儀なくされており、一刻も早い復興を願わずにはおきません。
○自然災害と経済成長の関係
私は2年間通った明治大学大学院で受講した講義”災害法制度論”の中で、「日本の高度経済成長期からバブル経済まで経済成長が持続できた要因として、戦後復興はもちろんあったものの、生産年齢人口(15~64歳の人口)が増え続けたことと、甚大な自然災害が発生しなかったことが大きい」と学びました。(講師は中林一樹先生、 都市防災学や災害復興学を専門とし、首都大学東京の名誉教授であり、”帰宅難民”という用語を最初に使用された方)
<昭和20年から平成28年までの自然災害による死者数>
<1955年=昭和30年から2016年=平成28年までの実質国内総生産の前年比伸び率>
教科書的には戦後の復興や朝鮮戦争特需、技術革新と設備投資、高い貯蓄率による潤沢な資金供給、豊富な労働力などで説明されていたところに、「甚大な自然災害が発生しなかったことが経済成長が持続した一因」との指摘は目から鱗でした。この指摘を踏まえると、近年の低成長は阪神・淡路地震と東日本大震災による経済的被害の影響を受けていると考えるのが妥当です。もちろん、生産年齢人口の減少や、平均所得の減少傾向、社会保障制度の持続性を不安視する見方などによる消費伸び悩みなども要因であるとは思いますが。<世帯あたりの平均所得金額。厚労省 国民生活基礎調査より>
向こう30年間における発生確率70~80%とされる南海トラフ地震や、同じく70%とされる首都直下地震がいざ起きた際に想定される被害とその後の日本経済全体に及ぼすマイナスの影響は相当程度になる覚悟が必要である、と考えられます。国も地方も、企業も個人も、できる限りの対策を講じて被害を最小限に食い止める努力が不可欠であることは今更私が申し上げるまでもありません。