住民討議会。開催される場所等によって、“市民討議会”、“町民討議会”、“区民討議会”とも称されます。

ドイツ生まれの住民参加の手法のひとつです。主たる目的は一般の住民の声なき声(サイレントマジョリティー)を発掘することにあります。住民の行政への関心や参画意識の向上、当事者意識の醸成、そして協働事業などを実践する住民の増加にもつながる有効な手段であるとの評価があり、私も同意見であります。我が開成町においても是非とも導入したい、導入すべきとの考えから、今回採り上げる次第です。

その特徴は以下の通りです。
①無作為抽出(住民基本台帳から公平無作為に参加候補者を抽出。高校生から高齢者まで、その地域の住民の縮図をつくる。)
②有償で一定期間参加(報酬のある仕事として行う。参加意識が積極的になる。標準として4日間程度。)
③事前の情報提供(専門家や行政が事前に討議の基礎となる情報を提供する。基礎知識が無い人でも議論に公平に参加できる。)
④討議・投票・合意(5人程度のグループを5~10程度つくって討議。毎回メンバーを変更し、結論に投票を行う。)
⑤提言の公開(結果を「提言書」としてまとめ、公表する。議論を実のあるものにし、公開することで公正・公平・信頼性を確保できる。)

日本では平成17年に千代田区で試験的に実施され、翌年三鷹市で初めて開催されました。以降、関東や中部地方を中心に全国の各都道府県に拡がり、神奈川県では大和市(HPはこちらから)や茅ケ崎市(HPはこちらから)、厚木市(HPはこちらから)などが定期的に継続開催しております。
住民が参加し、意見を表明し得る機会としては、各種委員会や協議会の類がありますが、団体の代表や有識者などによって構成されるのが常であり、その”代表者次第”ではありますが、一般住民や住民全体の声を拾えているか疑問もあります。住民説明会やタウンミーティングも参加者の層が高齢男性に偏りがちで、且つ限られた時間の中で、全員が相応の勇気をもって意見を述べることはできません。パブリックコメントについても、テーマに関する強い関心や思い、知識のある人のみが声を寄せるのみで、結果的に”意見ゼロ”も少なくありません。

これらと比較し、開催までの手間や時間がかかってしまう恐れはありますが、住民討議会は住民の真の声を拾うため、且つ前述の通りの効果も期待できる仕組みとして取り組む意義は十分にあると考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、当の開成町では現在“開成町協働推進計画の策定”(計画期間は2019~2024年度。2014~2018年度の計画の改定版)に取り組んでおり、“素案”(こちらのHPを参照ください)に対するパブリックコメントを募集中です。

そう、住民と”共に力を合わせて活動しよう”という”協働”に関してこそ、”住民討議会”の出番だと思う訳です。パブリックコメントは期待薄で実際に2014年の当初計画段階では意見は1件だけでした。

拝見した素案は質量ともに充実した素晴らしい内容だと思います。しかしながら、町が出した案をベースに進めると、町と住民は本来対等な立場であるはずが、行政主導の印象を与え、行政への依存を強める恐れもありましょう。これまでの協働の活動を通じて”町が得た情報”は当然反映されていると思いますが、住民が素案策定に参画することによって、パートナーサイドの真の声を拾うと同時に、当事者意識が高まる人や、協働を自ら実践する人が表れることも期待できるなど効果は小さくないと考えます。

今は人口増加の陰に隠れて真に深刻に採り上げられていないものの、自治会加入率の低下や公益活動団体はじめ各種団体の構成メンバーの高齢化などを踏まえれば、将来的な地域の活性化の担い手を発掘し、住民間の絆(社会関係資本)を強化するために、住民の当事者意識と参加意識を高める取り組みに注力すべき重要な局面にあると思います。