政策研究大学院大学教授・元厚労省保険課長の島崎謙治さんの講演を聞いてきました。テーマは「医療制度改革と自治体の役割」。

著書「医療政策と問いなおすー国民皆保険の将来」は大学院のある講座の指定図書につき拝読、”感想文”を書きました。国民皆保険の旗を掲げたまま、負担の増加・アクセスの悪化・医療サービスの質の低下のいずれかもしくはすべてが起きると予想、皆保険の形骸化を強く懸念されている。
※国民皆保険=コクミンカイホケン。すべての国民を何らかの医療保険に加入させる制度。

この類の話にしては、非常に熱い語りに少々驚かされた!危機感が相当強いことの表れと感じました。その一方で、たとえ話も交えた説明はシンプルで、分かり易かったです。頭の中の情報の交通整理をしていただいたような感覚でした。印象に残った内容は、
・国民皆保険が何とか機能したのは、高度経済成長と生産年齢人口が増加していたため。その逆もまた真なり。要は人口減少社会においては現行のままの制度は存続不可能。

・高齢社会の原因は少子化。アジア諸国の出生率も低下、日本よりも低い国も多い。香港1.21、シンガポール1.20、韓国1.17、台湾1.17(以上2016年)、タイ1.4、ベトナム1.7、中国1.7(以上2013)。日本の労働力不足は外国人で”頼らざるを得ない”と言われるが、自国の都合や奪い合いで、頼っても来てくれない恐れがある。

・少子化は1970年代にスタート。その後も人口が増え続けたのは、寿命が延びたこともあるが、出生数>死亡数だったため。2005年に出生数<死亡数と逆転。
・高齢化率、2010年で都道府県別で最高の秋田県のレベル(約30%)を、2040年になると最低の沖縄県のレベルが超える。
・生涯未婚率の上昇(2015年時点 23.4%)、1人暮らし世帯の増加。単に成年後見人をつければ済む問題ではなくなりつつある。
・消費税引き上げ、安倍一強の下でも延期された。いつできるのか不安。1%あたりの増収効果は2.6~2.7兆円と試算。

・1件あたりの医療費が1000万円以上の件数は1386件。最高は1億2027万円上位はすべて血友病。医療に投入できる資源は無尽蔵か、国民の草の根からの議論喚起が必要。

・成長頼みの財政運営。人口減少社会でGDPを維持拡大するためには、より多くの人が働くか、長く働く必要がある。働き方改革は思い切り逆行する動き。医療介護は成長産業であるが、いずれ労働需給がひっ迫することが深刻な問題になる。

・飯田市の取り組みは素晴らしい。①機能分担と連携による地域完結型医療を実施、②飯田医師会主導で、終末期患者に事前指示書の勧め、③福祉サービス事業などを市民・企業・行政のパートナーシップで展開。

○現行のままでは持続不可能な社会保障制度をどうしたら変えられるか?公務員も医者も学者も首長も議員も、それぞれの立場や持ち場でできることを草の根でやっていくしかない、との持論でしめられました(国会議員や国では変えることはできない、との意味だと理解しました)

あらためて数字やグラフで示され、そして強い口調で言われると、現行の社会保障制度の持続可能性が不安視されるのは当然のことで、将来のショックや打撃ができるだけ小さくなるよう今から少しずつでも手を打つべきと思いが強くなりました。。。