先週、日経新聞に「子ども医療費助成 どこまで」との連載記事が掲載されました。

この6月、9都県市首脳会議(※1)は「国民健康保険の国庫負担金の減額調整措置を直ちに全廃」との要望書を厚生労働省に突きつけた、とのことです。何が起きようとしているのか?医療費の制度についておさらいした後、医療費助成の今後について考えてみたいと思います。※1:埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長で構成される会議

○日本の全体の国民医療費の財源は?(平成26年度)
患者の負担 11.7%
保険料 48.7%(被保険者28.3%+事業主20.4%)
公費 38.8%(国25.8%+地方13.0%)
(公費による負担は保険者によって異なります。市町村国民健康保険と後期高齢者医療制度は給付費の50%+保険料の軽減等、協会けんぽは同16.4% など)

○医療費助成とは?
患者の負担(負担割合:未就学児2割、69歳まで3割)を自治体が肩代わりするもの。1960年代、東京都が“診療を受けられない乳幼児の命を守るため”との目的で導入され、全国の自治体に拡がった。

同新聞の調査によれば、2018年4月時点で、高校生まで助成する自治体は約3割、中学生までが約6割。2009年時点では、中学生までが2割未満だったことと比較すると助成対象は大幅に拡大した。

○国民健康保険の国庫負担金の減額調整とは?(説明資料はこちらから)
まず、国民健康保険は給付費の50%を国費で負担している

各自治体が独自の事業として現物支給方式(窓口で患者負担分を支払わなくてよい方法)にて患者負担を減免した場合、受診する患者数が増えると解釈する

増えた医療費については、国庫の公平な配分の観点から、公費負担分が減額される仕組み
○要望書
さて、今回の“要望書”ですが、その趣旨は“自治体ごとに異なる助成内容に対して不平不満が出ているため、国に統一した制度を求める”というものです。結果論ではありますが、“出されるべくして出された要望”との印象です。

医療費の負担を軽減したいが一旦導入した助成制度は止められない、助成制度を導入したいが負担が重荷になるといった自治体にしてみれば、”競合相手の自治体と格差を生じさせないために”、最後は”国頼み”とならざるを得ません。高齢者の医療費が無料化された経緯と似た展開に見えます。(高齢者の医療費は、1969年に東京が無料化、3年後に45自治体が追随、1972年に国の制度となりました。ただ、受療率の急騰、医療費増大に10年後から一部負担になりました)

○東京発で波及
2011年に助成対象を初めて高校生まで拡大したのも東京都は千代田区。平均地価538万円/㎡の区への移住においてこの高校生までの医療費助成の有無が重大な判断基準になるとは思えませんし、標準財政規模322億円に対して積立金1,102億円もある区の決定が、最終的には横並び意識と少子化対策上の対抗措置として自治体の規模や体力とは無関係に、財政力の厳しい自治体にまで影響が及んでしまうのが我が国日本の現実です。

仮に行き過ぎた競争による体力消耗への懸念が表明されたり、費用対効果の検証の必要性が訴えられたとしても、結論としては追随するしかない/せざるを得ないとの選択肢しかなかったのだろうと思われます。

そして、ことここに至り、国は“不公平”の解消を求められる事態となりました。国家財政を論じるにはあまりに無力ですが、一応もう少しだけ感想めいたことを書かせていただければと思います。

※この続きは明日以降とさせていただきます。