(1月3日のブログ「神奈川県市町村 高齢化率ランキング」の続きです)
元旦付け神奈川新聞に“県内市町村の高齢化率と財政力指数のランキング”が掲載されておりました。同紙は今年、新企画“データで見る神奈川”を開始、「データを基に県内33の市町村それぞれの地域課題を明らかにしていく」とのことです。高齢化率と財政力指数、その相関関係を含め興味を覚えたのでちょっと調べてみました。

○まず、財政力指数とは?
地方公共団体の財政力を示す指標。
普通交付税の算定に用いられた基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値。財政力指数が1をこえる団体を富裕団体と呼び,0.4未満を過疎団体の一要件とするなど,国が地方公共団体に対する財政援助の程度を決定する際の指標として用いられる。

○神奈川県市町村の財政力指数
データ詳細は添付ファイル(神奈川県市町村 高齢化率 財政力指数)の通りですが、財政力指数のランキングは、
1位 箱根町 1.413、2位 厚木市 1.143、3位 藤沢市 1.069。。。31位 三浦市 0.645、32位 山北町 0.625、33位 真鶴町 0.494。

○箱根町が1位だが・・・
箱根町が栄えある1位ですが、記事に掲載された同町財務課担当者のコメント『実情と違う。実際には財政は厳しくお金が足りないため、固定資産税の税率を高く設定している』の通り、”財政力指数が高い=財政に余裕がある”ではないケースもあると言われます。普通交付税の計算に用いる基準財政需要額と収入額の算出において、各市町村の自然的・地理的・社会的な諸条件に応じて、多くの補正がなされるものの、例えば箱根町の場合は、多額の観光関連の支出があまり考慮されず、指数の高さの割に台所事情は厳しいというのが現実です。

○財政力指数と高齢化率との関係
一般に、高齢化率の上昇は、生活保護や介護保険、医療保険など社会保障制度の公費負担の一部を担う市町村の財政負担を重くするとされます。
実際に神奈川県市町村のランキングを見ても、やや乱暴を承知で1位の箱根町を例外と扱わさせていただき、10位の清川村もダム所在交付金の影響が非常に大きいとされることも勘案すれば、高齢化率が高い市町村は概して財政力指数が低い、との傾向は確認できます。

勿論、様々な個別事情もあるでしょうし、鶏と卵の様な議論もあるでしょう。また、(箱根町や清川村も原データそのままに用いて)相関係数を計算しても0.50前後で、相関関係はないもしくは弱いです。しかしながら、私がいまさら申し上げるまでもないですが、高齢化の進行→財政の圧迫要因であることを強く意識して行財政運営にあたらなければならないことは確かでしょう。

○開成町の財政力指数
開成町の財政力指数は0.885、23位です。全国の類似団体(※1)の平均 0.50は大きく上回っていることを良しとするか、財政力指数の高い市町村の多い神奈川県内とはいえご覧の順位であることに、改善を試みるか?あるべき姿はやはり後者でしょう。

何故ならば、開成町は今後”急速に”高齢化が進むことが予測されており、順調である時に将来の課題に備えるべく、改善できるものは改善を目指すべきだからです。具体的な推計は添付ファイル(高齢者人口推計)の通りですが、高齢者人口は県西地区の一部で早ければ2025年にも(2015年比で)減り始めるとされる中で、開成町は2035年までに+32%、2045年までに+50%、後期高齢者はそれぞれ+67%、+88%とより急激な増加が見込まれております。
かなり先の話であり、社会保障制度や各種税制が現行のままであるとは考え難く、抜本的な見直しが図られている可能性も、逆に国家財政が実質的に破たんしている可能性もありますが、高齢者人口の増加・比率の上昇が町財政を圧迫する可能性が高い以上、それを視野に入れた行財政運営が不可欠であります。法人税収や所得税収が過去最高を更新し続けていたバブル期においても、国家の債務は減ることなく、増加の一途をたどってしまった過去に学び、その教訓を活かすべきと考えます。

(※1)全国の市区町村を「指定都市」「中核市」「特例市」「都市」「町村」「特別区」に分類した上で、さらに「都市」「町村」を人口規模や産業構造で細分化、計35のグループに分けている。そのなかで同じグループに属する自治体を指す。