東日本大震災から8年を迎えた3月11日の各紙朝刊は、震災・防災関連の記事が紙面を埋めました。神奈川新聞には、茅ケ崎市で開催されたワークショップ(※1)の記事が掲載されておりました。

(※1):まちづくり分野においては、地域に関わる様々な立場の人々が自ら参加して、地域社会の課題を解決するための改善計画を立てたり、進めていく共同作業とその総称。

記事によれば、開催されたワークショップは、“大規模災害が起きたとき、ひとりひとりがどのように対処するか?”について考えるもの。NPO法人が主催し、防災士が進行役を、茅ケ崎市防災リーダーが講師役を務めた。

災害時に予想される数々の場面で、それぞれがどのような選択をとるか、お互いの考えを共有した。例えば、“避難所に3千人避難したが、備蓄食糧は2千人分だけ。配るか?配らないか?”。“子どもと年老いた母親のいる家族を想定し、台風で避難勧告が出されたが、深夜で外は大雨。自宅近くには大きな川。避難するか?自宅にとどまるか”など。主催者側からは『正解はない。後悔しない行動をとることが大事』”との説明でした。

先の設定に関しては、私は”2千人の何食分・何日分あるかが不明ではありますが、まずは病人などその時点での弱者に優先的に配分する。残りを均等に配分する”。同時に”他の避難所などと備蓄食糧の状況についてスピード感をもって且つ密に情報の交換に努める”と回答します。

マニュアルや想定通りに事が運ばないのが大災害。いざという時のために、様々な意見や情報を交換するこの様なワークショップは非常に有効かと思います。

開成町ではこの度洪水ハザードマップが更新されましたが、まずは各自治会毎での説明会を開催し、想定される事態にとるべき行動を再確認すると同時に、住民間や住民と行政の間で、いざことが起きた時に備えて意見を交換しておくことは非常に有意義だと考えます。

避難訓練も実際に役立つものでなければならないのは申し上げるまでもないですが、ワークショップはすなわちイメージトレーニングや図上訓練の一種と捉えられ、発災時に落ち着いてとるべき行動を選択するための事前準備になり得ます。


(余談)
明治大学大学院の講師から聞いた話。明治大学では、学長を含む全役員が参加して図上訓練(※2)を実施したときのこと。想定される様々な事態(屋内外の実際の被害状況への対応、関係省庁・役所、保護者・生徒、交通機関、内部災害対策本部、ボランティア団体とのやり取り、メディア対応など)への対応シュミレーションを数時間にわたり続けたところ、疲れ果てた?役員の一部が音を上げた。実施主体である危機管理担当としては、実際の大災害発生時には、意思決定をする役員が体力の限界を感じるほどの事態は十分おこり得ると、訓練と言えども妥協を許さぬ姿勢で臨んだとのことでした。参考にすべき事例です。

(※2) 地図を用いて地域で大きな災害が発生する事態を想定し、地図と地図の上にかける透明シート、ペンを用いて、危険が予測される地帯または事態をシートの上に書き込んでいく訓練のことである。リスク・コミュニケーションの手法のひとつ。 これが、いわばハザードマップの役割を果たし、事前に危険を予測できることと同時に、避難経路、避難場所、即応性ある避難準備の徹底、地域住民や関係機関において如何なる対策や連携が必要かの検討など、参加者の間で共有することが可能となるとされる。