大学院講座”E-ガバメント”の講師・クラスメイトとともに韓国に2泊3日の視察旅行に行ってまいりました。目的は韓国の官民施設・業務におけるIT活用実例を学ぶため。
講師はソウル市職員から転じ、佐賀大院博士課程と早稲田大学国際情報通信研究科を修了、青森市情報政策調整監や佐賀県情報課情報企画監、聖路加病院ITアドバイザーなどを歴任という異色の経歴をもつ韓国国籍の現IT企業社長。
座学で学ぶのも大事だが、実際に見て何を感じ、どう行動するかがより重要との考えの下、これまで案内された日本人は国会議員・官僚・民間企業役員等々5000人を超えるとのこと。
ただ、『国会議員も官僚も日本でも是非導入したい』と口を揃えて言うものの、実際には何も変わらない。既得権益にすがる圧力の強さと真の危機感のなさ、縦割り行政の弊害などがその理由との分析。
すべて自費で日韓を往復、自身のビジネスのためとの目的は微塵もない。日本人と韓国人のface to faceの交流を通じて、相互に誤解を解き、お互いに史実を共有することから良好な関係を築きたいとの強い思いがある。
何回かに分けて視察結果を報告させていただく。釈迦に説法もあると思うがご容赦ください。
様々なIT活用事例等の視察、全体を通しての感想をふたつ。
○「設定した目的に対して100%の解決策は追求せず、マイナスも受け入れる(例:駅の利便性向上とコスト削減に因る運賃引き下げの目的→改札撤去。不正乗車は覚悟する。携帯電話はいつでもどこでも使えるよう利便性を高めるとの目的→電車内でも無線LAN完備。電話使用による声・音は容認)」との考え方が徹底されている。
これは韓国内でも賛否両論あるだろうが、方針が徹底している点では分かり易いし、既得権益はく奪を一刀両断できる政治力の証左とも解釈し得る。
○これだけのIT活用・業務や手続きの電子化が一気に進んだのは、単に金大中大統領がIT国家戦略を標ぼうした効果・結果とは片付けられず、やはり”1997年の韓国通貨危機”を経験したためと考えられる。
(話逸れますが)欧州統合の父 ジャン・モネ曰く『人々は必要なときにしか変化を受け入れないし、必要性を見るのは危機のときだけ』。”エンドゲーム~国家債務危機の警告と対策~”という本の冒頭にあり、暗に日本などが危機的な財政状況にあるにも関わらず、再建が図られないのは実際にはまだ危機に陥っていないため、と言わんとするもの。韓国の場合は実際に国家財政破たんの危機に瀕し、IMFの管理下に置かれたことで”変われた”と考えられる。
※次回、国会議事堂、ソウル市内の区役所、ソウル駅、病院、葬儀場等の視察内容を個別にお伝えします。