今般の全国的な記録的大雨によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
———————————————————
7/3(火)、総務省の研究会「自治体戦略2040構想研究会」の第二次報告が公表されました。当研究会は、”2040年をターゲットに人口構造の変化に対応した自治体行政のあり方を検討すること”を目的に昨年10月に発足したもの。

今回の提言通りにことが運ぶわけではないでしょうが、将来像を描く上で参考にすべき報告だと思います。以下、難解な用語も結構出てきましたが、要点を整理してみたいと思います。(報告書ファイルはこちらから)

○迫りくる危機
まず、迫りくる危機を以下の3点を中心に整理。
1.若者を吸収しながらおいていく東京圏、支え手を失う地方圏
2.標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全
3.スポンジ化(※1)する都市と朽ち果てるインフラ

※1「都市のスポンジ化」とは、都市の大きさが変わらないにもかかわらず人口が減少し、都市内に使われない空間が小さい穴があくように生じ、密度が下がっていくことを指す。個人的・家庭的事情で生じるため、ゆっくりと、小さな規模で起きる。

○新たな自治体行政の考え方
上記の通りの想定される危機に対する新たな自治体行政の基本的な考え方が、以下の通り示されました。
1.スマート自治体への転換
・従来の半分の職員でも機能を発揮できる仕組みが必要
・AI・ロボティクスが処理できる事務作業はすべて自動処理
・自治体ごとの情報システムへの重複投資をやめ、標準化・共通化を実施

2.公共私による暮らしの維持
・自治体は、公、共、私の相互協力関係を構築する役割に転換
・全国一律の規制を見直す
・定年退職者などが人々の暮らしを支えるために働ける新たな仕組みが必要
・地方の地縁組織は法人化などで強化する必要3.地方圏の圏域マネジメント
・個々の市町村が行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位の行政を標準化する
・都道府県と市町村の二層制を柔軟化する
・核となる年がない地域では都道府県が市町村を補完・支援
・市町村の垣根を越え、専門職員を柔軟に活用する4.東京圏のプラットフォーム
・早急に近隣市町村との連携などの対応が必要
・圏域全体で負担を分かち合い、利害調整を伴う合意形成が必要
・長期にわたる医療、介護サービスの供給体制を構築する必要
・首都直下地震に備え、広域的な避難体制を構築する必要
・東京23区外で職住近接の拠点都市を構築する必要
—————————-
”半分の職員でも機能を発揮できる仕組み”とは、2040年までの生産年齢人口の減少率予想が約22%であることに対して、かなり大胆な提言だが、それくらいの覚悟と電子的対応への本格的な取り組みを促す意図が窺えます。

強い共感を覚えるのは”市町村の垣根を越えた専門職員の柔軟活用”。小規模自治体単体では財政面の制約や、業務量がそこまで多くなく中途半端となってしまうために対応できずにいた分野などで効果大だと思います。

例えば、危機管理部門やIT・システム部門等々、官民問わず専門性が求められる職種に関しては2040年と言わず今から対応して欲しいです。この様な職種はいずれプロ化し、その仕事でもって正職員として自治体を渡り歩くような時代がくると思います。

アメリカのシティマネージャー制度の様に、日本でいう市長・町長・村長を”仕事”として渡り歩くなんてこともあり得ないとは言えません。多くのことで欧米諸国の先進事例を後追いしてきた我が国ですから。

ただ、著しい少子高齢・人口減少の進行は未曽有のこと。世界が課題先進国である日本の対応に注目しています。