韓国ソウル市視察の報告第3弾です。電子化等に関して、他国の方が進んでいたり、釈迦に説法の事例もあると思いますが、ご容赦ください。私自身は、わが町や近隣との連携において、実際に参考にできる事例はないか?との視点で見ております。
○国会議事堂
・朴贊大議員と秘書の方々から説明いただきました。(朴議員は公認会計士の資格保有。韓国の国会議員は、在任中は兼業禁止ながら、弁護士等の資格や他に職業がある方がほとんどで所謂職業政治家は少ないとのこと。秘書は公費で9名まで雇用可)
・2000年に”デジタル国会”を標榜、議場はペーパーレス。資料等はすべてモニターで見る。保存や転送は可。
・投票も座ったまま電子的に実施。すべてがインターネット上等で公表され、データ化されるガラス張り状態。無記名投票は議場前方の左右にある計8ケ所のブースで行う。牛歩は物理的にできない仕組み。
IT関連以外では、
・冗談半分ですが、モニターや椅子がすべて固定されているのは、投げられないようにするため。
・法律は80%が議員立法とのこと。
・小学校から民主主義について教育。生徒会長なども公約を掲げ、投票を実施(私が小学生の頃は日本でも同様のことやってましたが)。
○ソウル市 鍾路区役所
・東京で言えば、地理的・人口的に千代田区役所のような役所。職員3名から説明いただきました。
・まず、韓国では全国民に付与された住民登録番号と、それをベースに1999年に開始した公的認証システム(日本で言えば、身元確認のためのマイナンバーと署名のための印鑑の機能を合わせもった様なもの)により、電子的な行政サービスや金融取引が広く普及している。
全国どこにいても、自宅で住民票などの登録関係、所得証明などの税関係、大学卒業などの履歴関係、健康保険などの保険関係等々、約3000種類の公的書類の申請が可能。その多くが事前登録された個人用プリンターで発行可能。複数の方法で偽造等への対策も設定。コピーはすぐばれる仕組み。料金は基本的にゼロ。
税の申告や納付、病院での診察や処方履歴の照会、金融取引も可能。パスポート申請も電子申請と郵送で済む。引っ越しは転入届を出すだけで済み、転出の手続きは不要。
公的認証書は自宅PCのみならずUSBメモリ、携帯電話等にも保存可能であり、遠隔地にいても利用できる利便性あり。
・日本ではご案内の通り、マイナンバー制度が発足も、まだ普及率低い。電子納税システム(e-Tax)も、高価ではないがカードリーダーの自己負担などもあってか、利用者は限定的である。且つ個人情報が分散管理されているため、所得、年金、医療・介護、銀行取引などの手続きを個別ばらばらに行わなくてはならない。
・韓国の役所の窓口業務に関しても、効率化を最大の目的に、できるだけ窓口に来なくても要件が済む仕組みを構築。銀行等の民間企業もまったく同様の発想。日本のメガバンクも昨年あたりから漸く同じに方向に(マイナス金利というショックとゼロ金利長期化=利益減少に否応なしと理解)。
・自治体の枠を超えて、共同でコールセンターを設立。約600名のオペレーターで他国語対応。問い合わせの70%は電話で要件が済んでしまうものばかりで(30%は各役所・担当課へつなぐ)、費用対効果は非常に良いとの評価。
・役所に来ても専用端末で、前述の通り自宅でも発行可能な書類の発行が可能。鍾路区役所では3台設置。料金は住民票だと20円。この専用端末が役所のみならず、駅・地下鉄や病院などいたるところにある。
窓口のカウンターは業務や目的別には分かれておらず、要件確認後、基本的にはワンストップで対応。障がい者専用窓口あり、点字の手続き案内書あり。
・どの程度の人員削減効果があったか?との質問に対して、『職員数は減っていない、住民のニーズの多様化等に減らせない。効率化されたお陰で、その多様化等に十分に対応できている(=職員を増やさずに済んでいる)』との答え。
※公的書類を発行する専用端末機、対応する書類の種類は限られるが、日本でもコンビニにあるといえばある。しかし、マイナンバーの普及率の低さもあり、費用対効果はまだ著しく悪い。千葉県某市で試算したら住民票1枚1000円以上だったとか。マイナンバーの普及を待つ選択もなくはないが、自治体単独で導入済する選択肢も十分検討に値しそう。既に導入済の自治体もあるが、小規模自治体の場合はコスト面で広域での連携の方がより有益か。
いずれにせよ、今後の人口減少、すなわち労働力不足などを視野に入れれば、行政サービスの効率化・生産性向上は喫緊の課題であり、その解決策のひとつが電子化の普及であることは間違いないことを再認識した次第である。