お隣の南足柄市で、老朽化が進んだ公共施設のあり方について、市内各地で市民との懇談会が始まりました。
神奈川新聞(11/27付け。記事はこちらから)によれば、「公民館など153の公共施設のうち、約7割が築30年以上経過」、「市企画課によれば、少子高齢化と財源不足によりすべての公共施設を維持することは困難」とし、「住民と課題を共有し、維持費などを先送りしないための方策を共に考えることが狙い」とのこと。
タウンニュース足柄版(12/1付け。記事はこちらから)では、「小中学生の数は20年後に約4割減る」、「市民1人あたりの公共施設の面積は3.5㎡と箱根町に次いで県で2番目の広さ(県平均2.40㎡)」、「すべてを建て替えもしくは大規模改修する場合、40年間で721億円、1年で平均18億円の費用がかかる」としております。
ご案内の通り、公共施設とインフラ施設(道路・橋・上下水道など)の老朽化に関しては、災害対策として耐震性の問題と財政負担の問題のふたつの課題を抱えております。公共施設の多くが高度経済成長期に整備され、一気に老朽化が進む構図は概ね全国共通のことであり、開成町も同様の課題があると理解されます。
南足柄市の場合は、既に供給過多である可能性がある中で、人口や財政の現状と今後の見通し等を踏まえ、”再編”に向けた動きが一足早く本格化していると言えるでしょう。
○開成町の公共施設・インフラ施設の老朽化
開成町の公共施設・インフラ施設について、公共施設等総合管理計画(平成29年3月)から数字を拾ってみると、築30年以上は全体の58%と南足柄市よりは僅かながら老朽化の進行が遅い。1人あたりの面積は2.42㎡と県の平均並み。
上水道については、40年以上が経過した施設はまだ10%未満だが、20年後には一気に約65%まで増えるとされています。人口減少下で維持管理費を価格に転嫁すると、水道料金は2倍にも3倍にも跳ね上がるとの試算もあり、生活に直結する重要な課題です。また、今般、水道法改正案が成立すると、水道事業の民営化が進むともされ、中長期的に大きな変革の局面を迎える可能性も否定できません。
すべての公共施設を保有し続ける場合、向こう40年間の所要経費は1年あたり9.9億円。直近10年間に使った建設事業費は1年あたり平均9.4億円、あくまで試算に過ぎませんが、差し引き0.5億円の不足となる見込みです。(詳しくはこちらの町HPから)
○公共施設の再編において
公共施設再編において私が重要と考える視点は、まずは近年”当たり前”となりつつありますが、”複合化・多機能化”。ひとつの箱物に複数の機能を持たせ、効率的な利用や課題をワンストップで解決できる仕組みを目指す発想です。
そして、地域内の経済循環。建築資材等々に関してできる限り地場産のものを使用することによって、お金を地域の外に逃さず、利益→税金の循環など地域内にとどめる発想です。
また、施設を最大限使用することによって、費用対効果の”効果”を上げるよう努める発想です。例えば、学校の図書館やプールの利用を生徒に限定せず、地域の住民も使用できるようにする。稼働率の上昇は投資のリターン・効果の上昇と解釈されます。
最後に住民の意見の吸い上げ方について。南足柄市では、今回の懇談会の後、シンポジウムを開催の予定とされてますが、いずれも住民の意思に任せ参加したい人が参加する一般的なスタイル。声なき大衆の声を集め、反映させるための”住民討議会”をお勧めしたいです。
無作為抽出で高校生以上の市民に案内を発送し、有償で討議会への参加を促すもので、実際に再編後の施設を使用することになる若い世代の声や、考えや思いがあっても積極的に声に出す機会のなかった主婦層などの声を集められるとされます。地元の名士も、要職にある経験豊富な方々の意見ももちろん大事ですが、本当の民意を探り出す努力が必要な時代だと思います。(大和市の取組事例はこちらから、相模原市の取組事例はこちらから)