このたびの台風21号並びに北海道胆振東部地震により被災された方々とそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
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超高齢化社会はすなわち多死社会の到来を意味し、実際の死亡数も増加基調にあり、平成29年は134万人(推計)まで増えました。今後も高齢者数が最多になると予想される2040年頃ににかけて、死亡数は約167万にまで増える見通しです。

○多死社会の課題
どこで最期を迎えるか、死生観の変化、火葬場の確保、円滑な遺産相続などが、今後新たな課題となるとの指摘もされております。
遺族にとっては、死亡に伴う各種の煩雑な事務手続きが発生することになりますが、先日、神奈川県大和市が”葬儀や書類提出など一括相談を受ける遺族専用の窓口を開設する”との報道がありました(日経新聞の記事はこちらから)。三重県松阪市の先行事例を参考にしたとのことですが、多死社会を見据えた住民サービスの向上と行政サイドの業務効率化いずれにも資する取り組みと言えましょう。

年金関係は年金事務所に出向くか必要書類を取り寄せる必要があるなど、すべての手続きが市役所で完結するわけではありませんが、”ここに行けば、もしくは電話すれば大丈夫”といった”安心感”は遺族にとって非常にありがたいものと思われます。

精神的なショックがある中、行動をおこす気になれないとか、どこから手をつけてよいか分からないといった状態に陥ってしまう遺族の方も少なくないと思われます。窓口が一元化されることによって、複数の部署で手続きする必要がなくなり、遺族の負担が軽減されることのメリットは大きいです。

私は、派遣社員として年金相談員を1年半ほど務めた経験がありますが、遺族年金の申請手続きは非常に手間がかかることを知っております。申請書の記入項目がとても多く、遺族の誰も知らないような項目があったり、添付書類も故人のものと遺族のものなどとても多いです。遺族からその煩雑さに関する苦情や改善要望をさんざん聞かされてきただけに、この大和市や松阪市の取り組み(他にも多くの自治体で同様の取り組みはあると思います)の意義が十分理解できます。

○小規模自治体でもできないか?
大和市の人口は約23万人、年間の死亡数は約2千人(平成29年)に対して今回4名の専任職員を充てるとのこと。開成町は人口約17,500人、死亡数164人(平成29年)、おおよそ2日に1件の手続き対して専担者(+バックアップの兼務者)を配置する需要と配置できる余裕があるかどうかは微妙なところでしょうか。

他町と連携する類でもなく、現実的には対応は難しそうです。以前おふたりの方から、死亡・相続の手続きでたらい回しにされたとのお話を伺ったことがありますが、電話でも窓口でも、その専担者はいなくとも、しっかりとした案内ができる体制を整えることが求められます。

ちなみに電子化が相当程度進んでいる韓国では、死亡に関するものを含め行政手続きの案内はその70%をコールセンターで処理し、実際の公的書類の交付は自宅PCで可能となっております。同じことが日本で可能となるためには、まず自治体間の書類様式の統一化やシステムの統合から始める必要がありますが、ようやく先般の総務省の”自治体戦略2040構想研究会”の報告でその方向性が示された段階であり(報告書はこちらから)、追いつくにはまだ時間がかかりそうです。