先日(7/8投稿)も採り上げました総務省の有識者会議「自治体戦略2040年構想研究会」。昨年、”2040年をターゲットに人口構造の変化に対応した自治体行政のあり方を検討すること”を目的に発足したものですが、同研究会からの報告を受け、首相の諮問機関である地方制度調査会が制度設計の議論を始めました。(第二次報告はこちら2040年構想研究会 第二次報告

日経新聞(7/16付け地域総合面)によれば、安倍首相は、①圏域における自治体の協力関係と②公・共・私のベストミックスなどの検討を求めた、とのことです。

前回は、市町村の垣根を越えた専門職員の柔軟活用等に関して、見解を述べさせていただきましたが、今回は「圏域」と「都道府県による市町村の機能補完」について触れたいと思います。

○「圏域」。第3の自治体?
同研究会では、「圏域単位の行政を標準とし、権限や予算を増やすため法制化」を提言、安倍首相も前述の通り、検討を求めたとのことです。「圏域」とは従来から存在する「連携中枢都市圏」(概要はこちらから)の発想とほぼ同様と見なしてよさそうですが、「与えられる権限次第では都道府県や市町村と異なる第3の自治体となる可能性がある」とされております。止まらぬ東京一極集中と著しい税収の格差などを背景に、近時、議論の聞かれなくなった“地方分権”ですが、この“「圏域」に与えられる権限次第”で今後の”地方分権“の方向性も同時に示されるものと思われます。全国一律の制度の下での行政運営ではなく、それぞれの「圏域」で事情に合った行政を展開していくのが理想的であると考えます。

○都道府県が市町村を補完。奈良モデル。
ただ、中核都市がない地域では都道府県が市町村を補完する(通称“奈良モデル”)、との提言もなされております。この発想は、平成の大合併の目的であった“地方分権の担い手に相応しい行財政基盤の確立”の前提である“フルセット主義”(各市町村が一律にすべての行政サービスを行うこと)との決別を意味するものと解釈され、今後の議論の行方が注目されます。

○合併はもはや推進されず?
要は、“合併”について、今後は前向きに推進する意向はない、と示唆しているようにも受け取れます。平成22年に一区切りがつけられた平成の大合併、合併特例債の償還が始まり、交付税の算定時の特例期間も終了しつつある中、これから“効果の検証”があるものと思われましたが、明らかな効果はなかったとすでに結論付けられたのでしょうか?

平成の大合併が推進された当時も、暗に目標とされた“行財政運営の効率化のために人口1万人未満の自治体を削減する”との方針も、一旦断念されたとみるべきなのでしょうか?

最近、諏訪市・岡谷市・下諏訪町の住民グループが合併協議会の設置を住民発議しましたが、合併を推進する特例等の制度は一旦なくなったとはいえ、人口減少が止まらぬ自治体などが、今後”合併”を検討することは十分に想定されることから、”合併”に関する国のスタンスをこの機に確認しておきたいところです。