「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」シリーズの最終回です。その1でSIBの概要、その2で八王子市の実例を紹介させていただきました。今回ご紹介する事例は、兵庫県川西市(人口約16万人)、新潟県見附市(約4万1000人)、千葉県白子町(約1万1500人)の3市町連携による健康マイレージ事業です。
これまでも近隣の市町村が連携してSIBを導入した事例はありましたが、距離が離れた自治体間の連携は初めてです。健康で幸せなまちづくりを目指す自治体首長の集まりである「スマート・ウェルネス・シティ首長研究会」のメンバーである3市町が広域で連携したものですが、SIB事業の組成や運営にかかわるコストを分担し、単独の自治体ではスケールメリットが働かないという課題を克服したものです。
特に注目すべきは白子町、人口1万人強も町でも実際に参加できたことの意義は大きいです。開成町でも単体では無理であっても、近隣もしくは遠隔地の自治体と連携することによって、十分に取り組み可能であることが示された格好です。
成果指標は、各市町が実施している健康ポイント・マイレージ事業への①参加率、②参加者に占める運動が不十分である層の割合、③参加者の継続率、④参加者の歩数の変化。
※当該プロジェクトの詳細はこちらの筑波大学によるプレスリリースをご参照ください。
今回の広域連携によるSIB導入を主導した筑波大学久野教授は、すでに二つ目の案件組成に向けた活動に着手。勉強会には10市町が参加したとのことですが、人口約1万人の北海道東神楽町をはじめ中小自治体も含まれており、すそ野が拡大している様子が窺えます。
専門的なノウハウや経験・実績を有する民間企業やNPOに課題解決を委ねることによって、実際の”効果”も期待できる上、行政職員はその他多様化する住民ニーズへの対応により注力できるようになり、さらに自治体の連携などによりスケールメリットが発揮され、トータルコストの削減も果たし得るSIB。
少子高齢・人口減少社会に入り、現行の社会保障制度の持続性が不安視され、且つ行政職員を含めた全体的な労働力の不足も危惧される中、様々な社会的課題の克服のためにこのSIBへの需要は確実に強まってくるものと予想されます。