先週末、「全国ソーラーシェアリングサミット2018」に参加、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)による稲作の現場を視察させていただきました。場所は小田原市桑原、3年間放棄地であった1反2畝の田んぼを86歳の地権者から借り受け、今春、耕作&発電が始まったものです。
この案件の詳細を含め、ご説明いただいた内容は以下の通りです。
・総工費1400万円(京セラ製パネル208枚設置、容量は58.24㎾)に対して、年間の売電収入150~180万円の想定(買取価格21円/㎾)→8~10年で初期投資額は回収の見込み。
・ソーラーシェアリングの実施事例は全国で1200件弱。千葉県300件、静岡県150件が先進自治体。神奈川県はまだ30件弱。
・鈴廣蒲鉾さんから魚のあら等を提供いただき、有機肥料として使用。
・別の市内の田んぼでソーラーシェアリングを利用して酒米を育成、大井町井上酒造さんでスパークリング酒を仕込む計画。
・電力会社への接続負担金は所謂空き容量により、地域・自治体によって大きな差がある。小田原市70万円、南足柄市112万円、中井町4万円。
・昨年度中に県から営農型太陽光発電の認可はおりたが、東電との接続は工事の順番待ちで未完了、売電はまだ始まっていない。
・小田原市の農業委員会で、他地区の委員から景観を損なうことを理由に設置反対の意見が出たが、地元桑原地域の委員さんが「“放棄地”も景観を損なう。放棄地でなくなることが大事」との主旨で賛成してくれたことで承認された経緯あり。
実際に現地を見させていただいた感想は、
・景観については、“人工物”としてみると、“景観を損なう”との意見・印象があるのも肯けます。ただ、この立地の場合は、田圃の周辺の視野に入る範囲内に、民家やトラック配送センターなどが数多くあることから、“著しく損なっている”との印象は受けませでした。
一方“再生可能エネルギーの普及や地球環境問題への取り組み”の視点でみれば、先進的との印象を受けます。要は、考え方や立場によって意見や印象は異なる、としか言えません。
・支柱がある分、収穫量は確実に減ることをどうとらえるか。これまで放棄地であった場合は、放棄地でなくなることのメリットを重視し、従来から耕作地でありトータルの収入増を目的とする場合は、売電による収入見込み額が農作物の販売収入よりは格段に多いことに鑑み、いずれの場合も受け入れるしかないと思われます。
・地権者自らが発電事業に取り組む場合のリスクとしては、固定価格買取制度における10年後の価格の変動リスク、資金を借入によって賄う場合は金利変動のリスク、パネルの破損・盗難・寿命のリスクなどが考えられます。それらのリスクをすべて自己責任として受け入れられる場合のみ取り組み可と言えましょう。現時点での私なりの結論としては、
・放棄地対策としては有効な一手であるとの考えは視察後も変わりませんでした。
・地権者自身が収益目的で発電事業に取り組むか否かは、正に地権者の考え・判断次第。
放棄地であったか否かに関わらず、地権者自身が収益目的で発電事業に取り組む際には、あくまで発電事業への新たな投資であり、売電収入という見込みリターンに対して前述の様なリスクを新たに負うものであり、低収益性など農業・耕作の課題や問題を解決する手段ではないことへの理解は不可欠である、と思います。