8/15(水)付け日経新聞に”国や自治体は、生産緑地の宅地への転用が急増しないよう対策を急いでいる”との記事が掲載されておりました。足柄上郡には生産緑地はなく、想定される課題は概ね都市部に限った話との理解ではありますが、”今後の日本の農業”を見通す上で非常に興味のある話題です。因みに南足柄市や小田原市には存在することから、決して縁遠い話でもありません。
ご案内の方も多いと思いますが、生産緑地とは、農業を30年間継続することを条件に、建築規制は受けるものの、固定資産税・相続税等の税務上のメリットのある市街化区域内の農地です。市街化区域内の緑地機能や将来の公共施設予定地などとして農地を計画的に保全し、良好な都市計画を形成することなどを目的に1992年に制定されました。
2022年に制定から30年目を迎えるのを前に法改正され、現在、生産緑地に指定された農家は以下の3つの選択肢からひとつを選ぶこととなります。(小田原市説明資料より。HPはこちらから)記事によれば、国や自治体は、宅地への転用が急増しないよう、貸し手も税優遇が受けられるとする法施行の予定であり、生産緑地の面積要件の緩和(500㎡→300㎡。隣接するブロックの農地を一体視)も進んでいます。
小田原市は459地区・約64ha(640,000㎡)、南足柄市は175地区・約23haが指定されているが、面積要件が緩和されても、300㎡未満が8割以上を占めることから、今後さらなる規制緩和や法改正がなければ、その大半は生産緑地と存続したくてもできないものと解釈されます。
(大)都市部では、望まれないにしても宅地化や、規制緩和で認められるレストランや農産物販売店などへの転用や、既に先行事例のある災害時の食料供給用と位置付けたり、市民農園や小中学校の体験農園を目的化するなど選択肢が多いかも知れません(その一方で、土地を手放したいが売れない場合の税負担の重さなどが大きなリスクとなると思いますが)。
しかし、都市部以外はそもそも利用可能な土地が不足しているとの状況は考え難く、担い手・後継者不足、宅地を含め土地への需要の弱さ、事業の収益性確保への不安など都市部とはまた異なる課題も想定されます。生産緑地に限った話ではありませんが、都市部の企業や大学との連携に課題克服の可能性が秘められているかもしれません。企業や大学には福利厚生や社会貢献活動の一環としての農業や収穫体験などに一定のニーズがあると思われます。
いずれにせよ、引き続きこの話題はフォローしていきたいと思います。