先週、生まれて初めて東大に入りました。正確には、”東大の敷地内に初めて足を踏み入れました”、「森と自然の育ちと学び自治体ネットワークの設立記念シンポジウム」を見学するために。

キャンパスの広さに驚きました。目的地はあの安田講堂、行けばすぐに分かるだろうと高をくくっていましたがすぐには分からず、困ったオジサンを助けてくれそうに見える優しそうな男子学生に聞いて漸くたどり着けました。構内には外国人を含む観光客が少なくなく、かと思えばその傍らで安田講堂をバックにファッションモデルと思しき女性の写真撮影が行われているなど、ちょっとした非日常でした。

○シンポジウム
さて、このシンポジウム、”森と自然の育ちと学びで拓く、子どもと地域の未来”とのサブタイトルで、”森と自然の育ちと学び自治体ネットワーク”の設立を祈念して開催されたものです。過日、埼玉県横瀬町のSDGs関連のイベントに参加した際に知り合った秩父郡皆野町で森のようちえん”花の森こども園”の代表からご案内いただき、多様な保育・教育への強い関心と、国の保育・教育制度に関する興味から参加させていただくこととしました。
内容は、保育・幼児教育の質の向上の観点から”非認知的スキル(※1)”の育成が重視されていること、自然が豊かな環境での子育てを望むニーズなどを背景に、”森と自然を活かした保育・幼児教育”の認知度や質の向上を図る必要があるとし、各分野(※2)からの報告とパネルディスカッションがなされました。
※1:学力テストなどで測定される認知的能力に対するもので、目標を達成するための忍耐力・自己抑制・目標への情熱や、他者と協力するための社会性・敬意・思いやり、情動を抑制するための自尊心・楽観性・自信などを意味する。
※2: 自治体、東大院教育学研究科、国立青少年教育振興機構、国土緑化推進機構、そして評論家尾木ママ

鳥取県など一部自治体は認証制度を創設しているものの、現在、認可外とされている”森のようちえん”を国が認可することや、公的補助の対象にすることを目指す活動の一環とも理解されました。

○森のようちえん
森のようちえんとは、園舎を設けず、自然の中で子どもたちを遊ばせて、その体験を通して育てるもの。保育者は子どもたちを過度に指導しないのが基本方針。北欧から輸入されたもので、東日本大震災の発災を機にパラダイムシフトがおき、需要が高まっている、とされています。現在16県、110自治体が独自の認定制度を設けており、先日お話を伺ったその埼玉県皆野町の花の森こども園でも、入園希望者は少なくなく、東京や横浜市から引っ越してくる世帯もあるとのことでした。

首都圏・政令都市での調査においても「森のようちえんに通わせることに、約半数が関心を持っている」との結果も出ていました。そして、”特に魅力と思うもの”として、経済的な支援(無償化)よりも、自然を活かした保育・教育の方が多いとの結果でした。
また、各種報告の中で興味を覚えたのが、”海に入ったことのない子どもが、海に初めて入る前に描いた絵と入った後に描いた絵の違い”でした。
体験前は、”自然は客体・対象。自分と自然は違う。自然は見るもの”であったものが、体験後には”自然の中にいる。自分も自然の一部であること”という自然に対する認識や関わり方の変化が絵に表れる、との指摘でした。現代の学校現場において増加中の課題(不登校、暴力行為、進級指導の増加など)に対する取り組みとして、時代が求める多様化の視点、まちおこしや移住策としてなど示唆に富み、参考になる東大での授業でした。お隣の小田原市にも森のようちえんがあります、引き続き最新の動向をフォローしたいと思います。