明治大公共政策大学院ガバナンス研究科の1期生であられる 早坂よしひろ都議のお話を伺う機会に恵まれました。テーマは“2020年東京オリパラのレガシーについて”。障がい・障がい者に関する見識も深く、目から鱗の話が多くとても有意義でした。

いきなり話は逸れますが、実績も歴史もない大学院の新しい研究科に“1期生”として入学された勇気?にまずもって敬意を表します。開設後13年が経過した時点で入学した私は、開設後蓄積された様々なデータと公表された情報(修了生の状況や外部からの評価など)を参考にしつつ、他校とも比較した上で進路を選択しましたが、それらがまったくない中で“よくぞ”といった印象です。

○オリンピック・レガシー・キューブ
さて、講義の話に戻りまして、“オリンピック・レガシーとは?”から始まりました。不勉強を恥じましたが、初めて見る”オリンピック・レガシー・キューブ”なるもので説明いただきました。

・レガシーとは所謂“遺産”のことですが、有形/無形・計画的/偶発的・ポジティブ/ネガティブの3つの軸で分類でき、通常は有形、計画的、ポジティブなものに焦点があてられるが、無形のものも少なくない。

・例えば、前回1964年の東京オリンピックのレガシーは新幹線、首都高速道路などが有名だが、タクシー自動ドアや冷凍食品、ユニットバス、大型のプラスティックゴミ容器なども当時開発され、今日に残る他ならぬレガシー。

そしてバレーボール“東洋の魔女”の大活躍によって女性のスポーツや社会進出が活発化したことも無形のレガシーと言える。
○障がい者スポーツ
障がい者スポーツの話題に転じ、
・2012年のロンドンオリパラは“ロンドンプラン”を掲げ、一般的には史上最も成功したとされるが、民間調査では「障がい者への意識がポジティブに変わった30%、変わらず50%、悪化した20%」と実は目立った効果は確認されなかった。

寧ろ、多くの障がい者が“パラリンピック選手は特別であり、同一視されたくないとの思い”を抱いたり、ボランティア側も障がいの状況が変わらぬことは障がい者の努力不足も一因と考えるようになり、ボランティアの数が減少するなど、厳しく難しい評価がなされた一面もあった。

○2020東京オリパラが目指すレガシー
さて、2020年の東京オリパラですが、レガシーとして残す計画は、有形/無形それぞれ以下の通りとのことです。

有形:各種競技施設、高層住宅(選手村を転用)、臨海部交通網など。
無形:バリアフリーの浸透、障がい者スポーツの活発化、ボランティア文化の定着、多様性を尊重する共生社会の実現、省エネ対策の推進など。

この11月、改正バリアフリー法が一部施行され、“共生社会”の実現に向けて本格的に進み始めた環境下、バリアフリーの浸透や障がい者スポーツの活発化は時宜を得たものとして積極的な推進が期待されるところです。

ただ、グローバルな視野で見れば、目下の世界的な共通課題は地球温暖化対策ではなかろうかと思います(先進国の経済的には保護主義の再燃だと思います)。その視点では、環境対策を打ち出すことや、その分野における日本企業の強みをアピールするような取り組みがもっとあってもよさそうに思えます。

最後に、講師との質疑応答において、個人的に東京一極集中に伴う弊害や災害時のリスクを懸念していると前置きした上で、「選手村跡地への高層マンション建設は(それらへの需要があり売れるとの前提で)東京一極集中を加速させると同時に、首都直下型地震発生時の災害リスクが増すものと懸念される」と私見を述べ、見解を伺った。「人は住みたいところに住む。液状化現象などが懸念はされるが、台東区などでは小学校が足りなくなるほど人気化している」との主旨の見解、都議として都の政策を肯定するいたってまっとうな回答でした。

しかしながら、私個人としては、国も東京都知事も少なくとも表面的には一極集中に因る混雑・渋滞の激化、地方との経済的格差拡大、災害発生時のリスク増大などに懸念を抱き、対外的に表明していると理解しており、跡地利用のプランはそれらの懸念を払拭する方向とは逆に、増幅する施策であると思えてなりません。

いざ首都直下型地震が発生した際に、津波のリスクは2~3mと限定的の様ですが、過度の集中により人や車が多過ぎて、火災の消火活動や人命救助活動をまともに行うことができるか心配です。”事前復興”なる言葉がありますが、財政的なゆとりのなせる業でしょうか、災害発生後の復旧コストを下げる発想が残念ながら乏しいと感じられます。私が心配し過ぎで、杞憂であればよいのですが。