先月末、内閣府の経済諮問会議が基礎的財政収支の試算を更新しました。(内閣府資料はこちらから)
日経新聞(1/31付)は、「財政黒字化 なお1年遅れ。高め成長でも26年度。甘い想定、実現は不透明」と報じております。

○基礎的財政収支とは?
通称「プライマリーバランス(Primary Balance)」。国や地方自治体などの基礎的な財政収支のこと。一般会計において、歳入総額から国債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額のバランスを見たもの。
プライマリーバランスがプラスということは、国債の発行に頼らずにその年の国民の税負担などで国民生活に必要な支出がまかなえている状態。逆に、プライマリーバランスがマイナスということは、国債等を発行しないと支出をまかなえないことを意味します。(SMBC日興証券 用語集より)

○試算結果
さて、更新された試算ですが、“成長実現ケース“(楽観的シナリオと呼んで差支えないと思います)で2026年に黒字化、”ベースライン”(慎重なシナリオ)だと少なくとも2028年までは黒字化しない見通しが示されました。

2010年を基準年とする従来の目標は、2020年の黒字化を目指しておりましたが、目標達成時期の先送りが続いております。しかも、あくまで成長実現ケースの場合であり、あらゆる見通し・計画の類は堅めに見積もるのが鉄則だと立場にたてば、黒字化のめどはたっていないのが実状です。団塊の世代の方が後期高齢者となり、社会保障費の急増が見込まれている“2025年“までの健全化が期待されておりましたが、状況は難しそうです。

○利払い費
さらに、プライマリーバランスの黒字化は国家財政の健全化の第一歩であることは間違いありませんが、黒字化すれば債務残高が減る訳でもないことに注意が必要です。国債の利払い費を賄えるだけの黒字があって初めて債務残高が減ることになります。

利払い費はいかほどか?8~9兆円です。消費増税1%分の税収増は約2兆円ともされる中で、決して小さくない額です。要は国家の債務残高は増え続ける可能性が高いとみるのが妥当です。

いち国民として、国家財政が危機的状況にある!健全化をより強く図るべき!と叫んでもなかなかその声は届かず、無力感ばかりが募ります。市や町といった基礎自治体のレベルでは、今後さらに、国への依存が難しくなるであろうとの前提でことにあたるべきでしょう。税収など入りを増やすことにより一層真剣に取り組むと同時に、財政コストとリスクの軽減につながる民間の資金と知恵を最大限活用する必要性がますます高まると予想します。