目次

前回の続きとなります。

昨年末、日本政策投資銀行主催のオンラインセミナー“地域と取り組む学校部活動改革”を視聴しました。今回は、そのセミナーで紹介されたものを含め、様々なデータに基づく実態を確認し、改革の方向性と現行の制度について整理してみます。

中学校の部活動の位置付け

まず、部活動の位置付けについて、中学校学習指導要領(2021年度全面実施)から抜粋すると、“生徒の自主的、自発的な参加により行われる”、“スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するもの”とし、“学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるように留意する”とされています。

そして、”学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関連団体等と連携して、持続可能な運営体制を整えられるようにする”、とされています。

教員の働き方改革

文科省が打ち出した“働き方改革を踏まえた部活動改革”(2020年9月)で示された、改革の方向性は以下の通りとなっています。働き方改革に真剣に取り組む姿勢が明確に打ち出されています。

・部活動は必ずしも教師が担う必要のない業務であることを踏まえ、部活動改革の第一歩として休日に教師が部活動の指導に携わる必要がない環境を構築する。
・部活動の指導を希望する教師は引き続き休日に指導を行える仕組みを構築する。
・生徒の活動機会を確保するため、休日における地域スポーツ・文化活動を実施できる環境を整備する。

教員の状況

データが示す実態は以下の通りです。
・運動部に限定したものですが、 “担当教科が保健体育ではなく、且つ、担当部活動の協議の経験がない教員の割合は46%”。(平成26年 日本体育協会の調査)
・部活動に関わる勤務時間は、平日41分間、休日2時間10分間(平成28年 文科省調査)。平成18年はそれぞれ34分間、1時間06分でいずれも概ね2倍に。

生徒の参加状況

・全国36,400校の公立中学校への調査によれば、部活動に所属している生徒の割合は89.9%。うち運動部が71.4%、文化部18.5%。(平成い29年度スポーツ庁調査)

外部指導者の制度

・部活動に外部の人が関わる制度して国や自治体が定めるものには、外部指導者と部活動指導員の2種類があります。

外部指導者:技術的な指導のみを行うものです。大会への引率はできません。2010年の文科省の資料によれば、“教員数の減少や専門的な指導ができる指導者の不足を補い”、“指導を多様化させ、充実させることができる”とされており、働き方改革とは異なる視点で導入された経緯と解釈されます(もちろん、自治体や個別の学校の事情によりますが)。

部活動指導員:2017年に制度化されたもので(スポーツ庁、文化庁、文科省)、教員に代わって、技術的な指導から管理運営、大会への引率を行うものです。担当教員等と日常的に指導内容や生徒の様子、事故が発生した場合の対応等について情報交換を行うなど十分に連携を図るとされます。学校設置者は規定を策定する必要があり、部活動の位置付けや教育的意義などに関する研修も義務付けられています。

経産省の動き

経産省では教育的見地とは多少異なる視点から、2020年に、“地域×スポーツクラブ産業研究会”を立ち上げました。主旨としては、少子化により部活動の存続が難しいこと、教員の働き方改革、ボランティア頼みの指導体制などの課題の解決を試みつつ、地域に根差したスポーツ産業を成長させる狙いです。

これより先に東京都杉並区などでは既に、前述の外部指導者を民間企業に有料で委託する形で、教員の負担軽減を図り、専門的な指導体制を導入しています。

次回、全国各地での外部指導者導入の先行事例を紹介しつつ、開成町教育委員会の方針と文命中学校での取り組み状況を確認し、今後のあり方について考えてみます。


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先見と行動

山神 ゆたか

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