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“少子化対策”の議論が活発化しています。“N分のN乗”方式を含め、出生率の低下に歯止めをかけた実績から、近時“フランス”への注目度が増し、頻繁に引き合いに出されています。
フランスの支援策
“N分のN乗”が話題となっていますが、フランスは元来国力維持のため、“人口減少”に非常に敏感な国とされ、実際に子育て支援に対する公的支出はGDP比で3.6%(2017年)と、OECD平均2.3%、日本1.8%を大きく上回っています。
中でも特筆すべきは家族手当でしょう、日本で言う児童手当です。子どもが2人以上いる世帯を対象とし、所得制限はありません。2015年の実績値で、第2子:月額約130ユーロ(≒18,000円 @140円)、第3子、第4子、第5子:それぞれ約170ユーロ(≒23,000円)と日本より多い上、14歳以上の子どもは65ユーロ(≒9,000円)加算されます。そして、最も大きな違いは、日本は現時点では中学校卒業までであるのに対して、フランスでは20歳まで支給されることです。
先般、日本政府が“18歳までの段階的な引き上げ”を示唆したのも、このフランスの制度を参考にした可能性がありそうです。
非嫡出子(婚外子)
『フランスの出生率が他国比高いのは非嫡出子(婚外子)の割合が高いから』、と言われることがあります。実際に、フランスは婚外子の比率が先進国では最も高く、実に59.7%(2016年。英国47.7%、米国39.8%、ドイツ35.5%。OECD平均39.7%)です。一方、日本は2.3%、出生率が1を割り込んだ韓国も1.9%と、突出して低水準です。
データを用いた分析で定評のある独身研究家・荒川和久氏、私もその著書「結婚しない男たち」、「ソロエコノミーの襲来」、「一人で生きるが当たり前になる社会」などを拝読しましたが、同氏は『合計特殊出生率と婚外子割合の間に相関関係は見出せない』、『日本の婚外子の割合が低いから出生率が上がらないという因果はどこにもない』とキッパリ。フランスや米国、日本など先進12か国の1990年から2018年のデータを分析したところ、正の相関の国と負の相関の国が概ね半々であり、同じ国でも期間によってまちまち、との結果を基にした見解です。
ただ、平成27年度少子化社会に関する意識調査(内閣府)において、結婚していないカップルに”婚外子を持つことに対する考え方”を問うたところ、”抵抗感が全くない”と”抵抗感があまりない”と回答した割合は49.5%でした。フランスの92.4%、スウェーデン98.6%、イギリス92.1%と比較すると明らかに低いです。よって、個人的には、抵抗感が薄らぐような制度改定等があれば、多少であっても出生率の上昇につながり得るのではないか、との思いはあります。
それでも、例えば、結果的に若年層の予期せぬ妊娠・出産が増えてもいけないことから、複雑で難しい問題であるとも思います。
※平成27年度少子化社会に関する意識調査(内閣府)はこちらから
隣の芝生は青い?
前述の通り、他国の事例を参考にしたり、国際的な比較をすることはとても大事なことですが、文化や歴史、国民性の違いはもちろんのこと、国民の“負担率”が異なることも忘れてなりません。ややもすると、表面的な優劣だけに目が行き、“隣の芝生は青い”状態に陥りかねません。
ちなみに、フランスの国民負担率は67.1%(2019年。租税負担率43.1%+社会保障負担率23.9%)であるのに対して、日本は46.5%(2022年度見通し。27.8%+18.7%)です。約20.6%の開きがあります。所得が月額30万円と仮定すると(各種控除や手当は考慮しないと)、ひと月に約6万円も負担額が違うことになります。
因みに、政府の借金を加味すると、負担率はそれぞれ71.5%と56.9%となり、差は縮まりますが、それでも約15%も違います。
少子化対策はどうあるべきか?
我が国の少子化の原因やそれらの背景は数えきれないくらいたくさん挙げられるでしょう。国も都道府県も市町村も、それらを分析し対策を講じています。子どもを持ちたい夫婦・カップルもそれぞれが努力していると思います。
人口減少過程に入ってしまったことから、その効果が現れるには時間が必要ですが、できるだけ効果的で効率的な策が講じられることを願うばかりです。
あくまで個人的な見解とお断りした上で、数ある原因とされるものの中で、主因は何かと問われたら、『”将来への不安”と”婚姻率の低下・結婚の減少”だと思います』と答えます。
次回、そう考える根拠等についてお伝えします。
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先見と行動山神 ゆたか
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