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“少子化対策”の議論が活発化している件、その原因とされるものはミクロ、マクロの社会課題から歴史、文化の類まで数多挙げられるでしょう。

あくまで個人的な見解とお断りした上で、私なりに少子化の主因は“将来に対する不安・不透明感”と“婚姻率の低下・結婚の減少”だと考えます。

将来に対する不安・不透明感

経済が右肩上がりで、終身雇用が前提の時代であれば、将来の人生設計も今よりは描き易かったと思います。それが経済は低成長、デフレが長引き、賃金も上がらず、年金制度は想定以上の高齢化進行と現役世代の減少=担い手の減少で、現行制度のまま存続するとは考えにくい状況・・・。

先が見通し難くなった“不安・不透明感”が最大の要因だと私は思います。子どもが(2人、3人)欲しいと思っても、財政的に養育していく見通しが立て難かったり、自らの仕事や生活に差し支える懸念が拭えなければ断念するせざるを得ないこともあるでしょう。

企業の内部留保に批判が集まったりしますが、私は企業も社会環境の変化の激しさなどに、将来が“不安”なんだと思います。ただ、正規雇用を減らし、非正規雇用を増やすことで人件費を削減し、その分増えた利益が貯め込まれているとの批判は一部は的を射ていると思います。

非正規雇用も将来の見通しを立て難くしているもののひとつでしょう。非正規雇用の割合は、女性54.4%、男性22.2%(2020年)と1990年の38.1%、8.8%から大きく増加しています。その中身としてより重要な”正規雇用を望んでいながら非正規雇用で就業している人”は230万人に上ります。

正規・非正規の差としては、賃金水準も重要ですが、“非正規雇用は契約が有期であり、正規よりは不安定であること”が将来を見通し難くさせているのは確かだと思います。

因みに、出生率0.84(2020年)の韓国の非正規雇用率は36.4%(2019年)と日本とほぼ同水準です。ただ、フランスは10%前後(2013年OECD調査)と低いものの、米国はや英国は50%を超えており、非正規雇用と出生率の関係性を国際比較から見出すのは難しそうです。繰り返しですが、その率云々よりも非正規雇用の賃金水準やセイフティネット次第のところもありそうです。

内閣府 男女共同参画白書(令和3年版)より

男女共同参画白書 令和3年版はこちらから

婚姻率の低下・結婚の減少

なぜ少子化の主因のひとつが“婚姻率の低下・結婚の減少“かと言えば、完結出生子ども数(※2)が減少傾向ではあるものの、1.90人(2021年)と合計特殊出生率(※3。2021年1.30人、2022年見込み1.27人)より格段に多く、人口の維持が可能とされる2.07人に近いからです。

要は、いたってシンプルですが、婚姻率が上がれば/結婚数が増えれば、出生率が上がる可能性があると考えます。独身研究家でデータを多用・重視する荒川和久氏は『今まで検討されてきた少子化対策は既婚の夫婦にいかに子どもを産んでもらうかばかりに着目していましたが、それではあまり効果がなく、(中略)本当は結婚促進施策をしないといけなかった』とおっしゃてますが、同意見です。

国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」より

※2 完結出生子ども数: 結婚からの経過期間が15~19年の夫婦の平均出生子ども数。夫婦の最終的な平均出生子ども数とみなされる。

※3 合計特殊出生率: 15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。

国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」はこちらから

基礎自治体としてできること

最後に市区町村でできることはなにか?少子化は国家の課題、よって法改正や制度改革など政策も国主導であるべきです。現在、市区町村レベルでも様々な策が展開されています。住民の福祉の向上や生活支援などを主目的とされますが、出生率の押し上げや子どもの数の増加も目標であり、その効果も期待されています。しかしながら、それらは国家のためというよりは、自治体間競争に勝ち抜くというそれぞれの市区町村のためというのが現実ではないでしょうか。

それでも、できることはあります。私は今回、国として“N分のN乗方式”が注目されている通り、より多くの子どもを持てば負担が下がる、もしくは子供が増えても負担は増えない仕組みや支援が有効だと考えます。多子世帯を保育料や給食費、国の制度でいう児童手当などで支援することで、同様の効果は得られると予想します。

また、養育費は年齢が上がるほど増えることがデータからも確認できます。フランスの家族手当で14歳以上の子どもに加算があることは、そこに着目していると推測されます。よって、子どもが高校や大学、専門学校等へ進学する時などに奨学金を貸与もしくは給付する制度も望まれます。小規模自治体であっても、企業版を含むふるさと納税や寄附に支援を仰ぐことなどで制度を構築することは可能だと思います。

以上、長くなりましたが、少子化対策に関する議論が活発化しそうな今、私見を述べさせていただきました。お付き合いいただき、ありがとうございました。

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先見と行動

山神 ゆたか

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