「総務省は人工知能(AI)や事務処理の自動化技術などを導入する自治体の支援に乗り出す」、9月9日付日経新聞が報じておりました(ニュースの電子版はこちらから)。先日、総務省の”自治体戦略2040構想研究会”より提言がなされた通り、「2040年ごろを想定して、人口減や少子高齢化で地方公務員も減少が予想される中、現在の半数の職員でも地域の行政機能を維持できるように自治体のIT化を加速する方針」です。
○AIやRPAを積極推進
ここまでの話は過去のブログでも触れさせていただいた内容です(7月8日「自治体戦略2040年構想研究会 報告書 1」はこちらから)。
今回新たに報じられた計画として、
・AI導入については、2019~20年に、各4地域をモデル地域に選び、介護分野などでの実証事業に取り組む。
・事務作業の自動化(ロボティック・プロセス・オートメーション。RPA)については、各50地域を選び、補助する。

「現在の半数の職員でも地域の行政機能を維持できるように」との方針に関しては、全国知事会や市町村長会などから独自性喪失などへの懸念から反対の声も聞かれ、これから議論が重ねられていくとの理解でおりましたが、”AIやRPAの導入”に関してはその議論を待たず積極的に推進されていく気配です。○生産年齢人口の減少
このAIやRPA導入への積極姿勢は、公務員削減や人件費削減との意図がまったくないとも思えませんが、一義的には生産年齢人口の減少が確実視されることへの対策と解釈されます。国家の経済規模を維持するためには(この目的に是非にも議論の余地はあると思いますが)、外国人や女性の就労増加などによって労働人口を維持するか、これらAIなどで生産性を向上させるしかありません。さもなくば、少ない人数でより長く働くしかなく、目下の働き方改革にもろに逆行することになってしまいます。

因みに生産年齢人口は1995年にピークを打ち、減少を開始しました。今後は年間5~6万人程度ずつ減り続け、その減り方は加速する見込みとなっております。日立グループが約31万人、トヨタグループが約36万人であり、5年毎にこの大手企業グループに匹敵する労働者数が減っていくという恐ろしい事態が待ち受けているわけです。

○リープフロッグ(かえる跳び)
日本の市役所や町役場の窓口では、電子化ですら進んでいないところが多いと認識してます。この段階での”AIやRPAの導入”となれば、ひとつのリープフロッグ現象(かえる跳び)と言えるかも知れません。アフリカで固定電話が普及する前に携帯電話が普及したり、中国でパソコンの時代を経ずにスマホ決済・キャッシュレス化が普及したのと同様に、法や社会環境が未整備であるが故に発展するというある意味皮肉な話です。いずれにせよ、労働人口の減少への対策は喫緊の課題であり、基礎自治体もしっかり対応していかなければなりません。