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前回の続きです。地域通貨の成功事例「さるぼぼコイン」、その詳細とそれがなぜ成功事例とされるのかについてお伝えし、開成町での取り組みの可能性を探ってみたいと思います。
さるぼぼコインとは
あらためてさるぼぼコインとは?“スマホアプリ上で利用できる電子通貨”です。
加盟店は1,685店舗。地域内全事業社の約40%、高山市内に限って言えば90%が加盟とのこと。比較対象が多くありませんが、同様の地域通貨である木更津市の”アクアコイン”や深谷市の”ネギー”と比べると加盟店が非常に多いです。よって、加盟率も高いと言えそうです。
ユーザー数は約23,000人。内訳は地域内在住者85%、地域外15%。観光客にも利用されていることが分かります。お金の地産地消に加えて、地域外からの資金流入!ここが大事です。累計コイン販売額は46億円です。(飛騨信組のホームページはこちらから)
”さるぼぼコイン”でできること
できることと行政などによる活用事例は以下の通りです。
- 地域内約1,685店舗での支払い
- ユーザー間の決済
- 店舗間での決済
- 税金の支払い。水道料金や国民健康保険料の支払い。
- 各種公的証明書の発行手数料支払い
- 健康ポイントの連携
- 交通情報(通行止め等)、災害情報(避難指示等)、クマの出没情報の配信
- 移住奨励金として付与(単身10万円、2名以上の世帯15万円)
- Go to Travel事業に合わせて、ポイント付与(1予約あたり最大8,000円)
- 商店街でのキャンペーンの実施(20%ポイント還元など)
- コロナ禍における小売業支援(20%ポイント還元や先払いクーポン制度の導入など)
”さるぼぼコイン”の特徴
さるぼぼコインならでは、を含めた特徴は以下の通りです。
- 国内で初めて静的QRを利用。加盟店が増えない理由は端末設置コストや通信料などお店側の費用負担の重さにあると判断し、その負担を極力減らすことを重視。
- チャージ方法が豊富。飛騨信組の窓口、専用チャージ機(増設予定とのこと)、全国のセブン銀行ATM、預金口座と連携。
- 365日24時間 チャージ可能。
- チャージすると1%のプレミアムが自動的に付与。
- ユーザー間の決済や店舗での支払い時の消費者側の手数料負担はなし。
- 加盟店間の決済には0.5%の手数料がかかる。
- 加盟店がさるぼぼコインを払い戻し・現金化する際には1.5%の手数料がかかる。あえて手数料を高く設定することにより、現金化を防ぎ、できるだけさるぼぼコインのまま、地域内を流通させようとする狙い。
- さるぼぼコインだけでしか買い物ができないオンラインショップを開設。裏メニューや限定商品、飛騨ならではの体験などを出品。人気化して日本円でも売りたいといった場合でも、5年間は卒業できない約束とのことです。
”さるぼぼコイン”のどこが素晴らしいか
ご覧の通り、利便性の向上とともに地域と向き合った様々な仕掛けが施されています。
お金の地産地消を図りつつ、観光の町として地域外からのお金の流入を獲得する狙いも明確です。セブン銀行との連携や365日24時間チャージが可能としたあたりにその意図がうかがわれます。
地域の加盟店の理解と協力なくして成り立たない事業ですが、地域の一体感や危機意識もさることながら、信用組合という組合員の出資による協同組織が事業主体となっていることもプラスに作用していそうです。同様の仕組みをもつ木更津市の“アクアコイン”も君津信組が連携しています。
行政との連携も上手くいっている様子で、納税や公共料金の支払いに対応することで利便性は確実に向上、行政側も業務コストの削減につながるなど、Win-Winと言えそうです。移住者へのポイント付与や商工業者支援の取り組みなどにおいて有効的に活用されています。
メジャーな電子マネーが入り込む余地が乏しいとされている所以は、シンプルに“地域のみんなが使うから“でしょう。その仕組みを構築し、引き続き進化中のさるぼぼコイン。仕掛け人の古里氏、天晴です。
人口規模との関係
講義後、質問させていただきました。“地域通貨が機能するために最低限必要な人口規模は?”答えは意外なものでした。
古里氏『小さ過ぎるとコストを吸収できない』、『10~15万人程度がやり易いのではないか』、『20万人を超えてくるとコミュニティー感がなくなってしまうため、上手くいかないのでは』との回答でした。店舗数と同様に対象地域の人口も多ければ多いほど良いと思い込んでいたら、多過ぎてもダメとの見解でした。それほど、コミュニティー感が大事ということですね、なるほど。
そして最後に、『地元で買い物しよう!地元がいいよね!といった文化が根付けば、地域通貨はいらない』との一言。けだし名言です。
私も是非、地域通貨・ポイントに取り組んでみたいです。狙いは同様に地域内の経済循環(お金の地産地消)、地域の絆・つながりを育むこと、行政の施策との連携(健康増進やボランティア活動活性化)、そして寄附の文化の根付きです。『小さすぎるとコストを吸収できない』との実体験に基づく回答には重みがあります。さるぼぼコインは初期投資を3年で回収したとのことですが、ビジネスモデル的にも非常に上手くいった事例と言えます。
他にも、狭いエリアでの通帳型の地域通貨や、複数の自治体・地域が連携したタイプ(“まちのコイン”)など種類がありますが、開成町がこのタイプを取り組むとしたら、広域連携が現実的だと言えそうです。
#聞きます #やります #やり遂げます
先見と行動山神 ゆたか
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