目次
岩手県紫波町図書館を再訪、視察研修を受講した件、前回に引き続き、何を見て学んできたかをお届けします。
今回は、本当に幅広い、積極的な取り組みの中でも特筆すべき「出張としょかん」についてお伝えします。
出張としょかん
図書館内外で、本当に様々な企画が実践されています（※２）。中でも特筆に値するのが「出張としょかん」です。そこまでやるんだぁ、というのが驚きも込めた感想です。
図書館職員が町内各地の公民館に“出張”し、情報提供などを行うものです。テーマはどのようにして設定しているか？質問したところ、『図書館での問い合わせ（リファレンス）を基に選んでいる』との回答でした。
例えば、２０２１年度は、“鳥獣被害“をテーマに、ＤＶＤを上映・説明した上で、図書館の使い方、農業に関する資料の紹介なども行ったとのこと。６か所で計９６名が参加、しっかりとニーズに応えていると言えましょう。
町役場の担当部署とも連携しているとのことでしたが、“主導はあくまで図書館“！ 例えば、この鳥獣被害にしても、図書館司書の方々は情報収集と知識の習得など、事前に相応の勉強が不可欠なはずです。繰り返しですが、そこまでやるんだぁ、との印象です。
なぜそこまでやる？
なぜそこまでやるのでしょうか？ 『紫波町図書館が掲げる目標・理念を遂行しているだけ』といったニュアンスの回答でした。
紫波町図書館は「図書館を中心にまち全体の地域力向上を目指しています」と宣言し、具体的に、
① 利用者が必要とする資料・情報が得られること
② 子どもの探求心が育てられ、調べる学習などが盛んになること
③ 町の歴史・風土に出会う環境があること
④ 農業などの地域産業に役立つ情報が活用されること
⑤ 医療など生活の質の向上に役立つ資料・情報を充実させること
に取り組んでいます。
出張としょかんは正にこれらの目標を達成するための行動に他なりません。実行し続けられる志の高さ、思いの強さ、責任感は簡単に真似できるものではありません。
『図書館に来るのは３割。７割は来ない。故に出向いていく』との言葉が印象的でした。
※２：
・読み聞かせ（毎月１回）、出張おはなし会、読書ボランティア研修（年２回）
・一般企画展示（１～２か月毎にテーマ更新）
・特別展示、通年展示、連携展示（選挙、農業など）
・児童展示（毎月テーマ更新）、ティーンズ展示（２か月程度でテーマ更新）
・調べる学習コンクール（小学生対象。２０２１年は町内外から７０作品の応募あり）
・夜のとしょかん（飲み物を飲みながらゲストスピーカーと語り合う。年４回。定員５０名、毎回満席）
・若者サポート（厚労省の委託を受けたＮＰＯによる適職診断、就活相談会。年６回）
※回数、頻度は２０２１年度実績。コロナ禍で例年と異なっていた可能性があります。
データの活用
他にも複合施設における図書館の位置付けや効果、書架の配置の意図、子ども専用トイレと授乳室の設置、書棚の耐震対策、直営/指定管理それぞれの強み弱み、紫波町図書館の司書さんが勧める全国の図書館、同居する音楽スタジオの人気ぶり等々、お伝えしたいことは山ほどありますが、このあたりで締めさせていただきます。
最後にデータの活用について。図書館基本構想・基本計画を練るに際して、当時の胡堂文庫や移動図書館、学校図書館の利用状況に関するデータをかなり細かく整備されていました。
年齢層・男女別の登録状況、地区別・学校別の利用者・貸出冊数、時間帯別の利用者・貸出冊数、県内図書館の蔵書数・登録者数・貸出冊数等、図書館間の貸借状況などに関するデータとその推移です。
当たり前と言えば当たり前ですが、目指す姿やあるべき姿を描く際に、実態を認識する作業は必要です。開成町でも同程度のデータはあろうと推測はしていますが、いかに活かすかが大事になってきます。
まとめ
こんな図書館あったらいいなぁ度は９.５点☆☆☆☆☆☆☆☆。前回訪問時よりも０.５点ＵＰ！次行ったら１０点になりそうです。
駅前の立地、延べ床面積や蔵書の規模、複合施設の核であること、レファレンス機能の高さ、町民ニーズにもマッチした発信力、町内各所に出張っていく行動力、多くの大人が参加する“夜のとしょかん”や、多くの子どもたちが参加する“調べる学習コンクール”などの企画力と実践力・・・等々。
学びのポイントが尽きません。
とは言え、開成町では開成町なりの図書館を町民の皆さんの参画を得て進めていきたいと強く願っております。
※今回お届けした情報は「町の未来をこの手でつくる（猪谷千香。２０１６年幻冬舎）」も参照にしています。
＃聞きます ＃やります ＃やり遂げます
先見と行動山神 ゆたか
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