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図書館探訪記、訪れた順番にお届けしています。開成町の参考になるものはあるか?あれば何が? 今回は福島県矢祭町「矢祭もったいない図書館」です。

岩手県紫波町にて、官民連携の複合施設「オガール」の視察研修を受けた帰りしなに寄りました。

寄贈図書のみの図書館とはどういうこと?”と以前から気になっていました。開館に際して、多くの町民が携わったそのプロセスにも興味を覚えていました。

詳細は後述しますが、”子ども“と”絵本“を前面に押し出した特色ある図書館、その独自の取り組みによって、「元気な子どもの声が聞こえるまち」という目標・理念を図書館を通じて発信していると感じました。

ある意味、とても明確で分かり易いメッセージの発信方法です。”図書館“の果たす役割にもいろいろある、とあらためて感じた次第です。

矢祭町

・矢祭町は福島県中通りの南部、東北地方最南端の町。人口約5,300人、面積約43㎢。
・1955年、2村の合併により発足。
・2001年に「市町村合併をしない宣言」を発した。現在も独立独歩、自立できる町づくりを推進中。

独特な政策・取り組み

・2002年、議会定数の大幅削減(18人→10人)
・2008年、議会議員の報酬を月額制から日当制に変更(20.8万円/月→3万円/議会1回出席。2016年度実績 33日間×3万円=99万円)。確認できる限りでは、日当制は今日現在も全国で唯一。

推進した当時の議長曰く『議員は本来ボランティア ; 非常勤特別職の議員報酬は議員活動への対価であり、生活給ではない ; 財政改革が目的ではない 』。イギリスの上院・貴族院が無報酬であることとも異なる考え方ですね。

地元商店街が発行するスタンプ券による公共料金・税金・幼稚園授業料等の支払いが可能
・町長・副町長・教育長、管理職も庁舎の清掃を行う。

なかなか独自色が濃いです。財政力指数は0.40と決して高い方ではありませんが、歳出規模約53億円、地方債残高約51億円の町にしては、積立金が約36億円もあり、将来に備えて貯めている印象です。

さて、本題の図書館です。

「矢祭もったいない図書館」

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基本情報

・蔵書数約48万冊。うち開架約7万冊。
・延べ床面積 開架 約430㎡、閉架書庫 約650㎡。
・2007年1月開館(武道館を改築)。
・総事業費 約3.4億円。

開館の経緯

・同町で新しい図書館開設の検討会が発足した2006年当時、世界的に「もったいない/MOTTAINAI」運動が活発に展開されていた。

そのキャンペーンの一環として、図書の寄贈を募集したところ、数カ月足らずで約30万冊が集まり、開館。同年8月に40万冊を超過して時点で受け入れを停止。現在は、新刊から3年以内の図書のみ寄贈を受け入れ。

・2007年、Library of the Yearの優秀賞を受賞! “蔵書のすべてを寄贈により収集するという手法の独自性とその実効性”が選考理由。

・運営は、開館から約10年間は町民のボランティアが担っていましたが、2016年から町による運営に切り替え。

「矢祭町子ども読書の街・人づくり宣言」

・2009年に採択。
① 読書を通じて語り合い、家族のきずなを深めます。
② 故郷を愛し、いのちをいつくしむ、こころ豊かなこどもをそだてます。
③ 本の力で、未来にはばたく子どもたちの夢と希望をはぐくむまちをつくります。

この年、この宣言の主旨にも則り、具体的に以下の「子ども司書」や「手づくり絵本コンクール」などの取り組みが始まりました。

また、以降の取り組みにおいて、柳田邦男氏(ノンフィクション作家)とあべ弘士氏(絵本作家)が講演会を開催したり、絵本コンクールの審査委員を務めたり、深く関わっていらっしゃいます。

「子ども司書講座」

・2009年から毎年開講。
・小学4年生~6年生を対象に、年間12回の講座で司書の仕事やボランティア活動などについて学ぶ。視察研修旅行もあり。

・修了後、「子ども読書推進リーダー」として活動。図書館で本の紹介カードの作成、読み聞かせ等を行い、手づくり絵本コンクールの審査委員も務めつつ、各学校でも図書館活動の活性化に貢献。

・中学3年生までの活動回数に応じて、初級・中級・上級の奨励賞が授与される。

・これまでの14年間で約130名の小学生が受講・修了。小学校児童数が270名前後、各学年40~50名の町で、近年は毎年5~10名程度が受講。

(感想)
・講座のカリキュラムは非常に濃い内容ですね。

・本や司書という仕事により関心が高い子どもたちが仕事やボランティア活動を学び、“町の図書館“とより深く関わってもらう意義は大きいです。施設や絵本コンクールなどの行事への思い入れも深まり、彼ら彼女らが大人になり、子どもを持つ世代になったときにも、その子どもたちが文化を継承してくれる期待も抱けます。

・すべての児童に読書を推進することはもちろん大事ですが、子どもたちがリーダー役として推進活動の一翼を担ってもらうこともまた素晴らしい。

※「子ども司書講座」のカリキュラムはこちらから
※「子ども司書講座」の報告書はこちらから
※「読書推進リーダー」の活動(令和4年度)はこちらから

「手づくり絵本コンクール」

・2009年から毎年開催。
・一般の部(高校生以上、絵本を出版したことがないアマチュアの方)と家族の部(中学生以下、家族と一緒に制作)の2部門。
最優秀賞の作品は製本・印刷される。
入賞作品は3年間、電子書籍として公開される。
※第14回・2022年の入賞作品の電子書籍はこちらから

・町内外問わず、全国から応募可能。一般の部の受賞はこれまですべて町外の方です。
全国の愛好家にとっての“絵本の聖地”と言えるのかも知れません。

・近年の応募数は2020年 251作品、2021年 268作品、2022年 246作品(一般56、家族190)。増加傾向にあります!

「矢祭もったいない文庫」

・町内23か所の集会施設に計6,000冊を配置(公民館、地区集会所)。

「事業所文庫」

・町内18か所の事業所に計7,600冊を配置(銀行、郵便局、温浴施設、役場など)。

「矢祭町読書の日」

・毎月第3日曜日を「矢祭町読書の日」に制定。
・公民館など「矢祭もったいない文庫」で、各地区の文庫サポーターが貸し出し業務を担うなど、引き続き町民ボランティアが活躍中。

その他

・移動図書車あり(約600冊)。

・昨年、移住スカウトサービス「SMOUT」にて“本を通じたまちづくりコーディネーター”を担う地域おこし協力隊を追加募集。1名採用され、現在2名が、子ども司書講座のお手伝いをはじめ、SNSでの発信、テラス席の設置など活躍中です。

町の強味や特徴の強化、課題の克服、新たなチャレンジなど、地方創生のために思いのあるヒトが赴き、活動する“地域おこし協力隊”は非常に優れた制度だと思います。開成町はその派遣条件に合致していないと思われますが、県西・足柄地域としては、失礼な言い方になってしまいますが、活用すべき制度。私もチャレンジしてみます。

まとめ

こんな図書館あったらいいなぁ度は8点☆☆☆☆☆☆☆☆。繰り返しになりますが、“子ども”と“絵本“に限りなく注力した、独特な図書館とまちづくり。

唯一無二、ここだけ、ONLY ONEです。どこでもマネできるわけではない、非常に興味深い取り組みです。それぞれのまちが目指すところをどのように表現していくか?矢祭町の場合は図書館がその発信拠点になっているとの印象です。

翻って開成町の場合はいかに?図書館にどこまでの独自色を求めるかを含めて、これから考えていきましょう。

絵本。久しぶりに絵本に接しましたが、いいですね。子ども作品からは子どもの感覚が意外にも結構ストレートに伝わってきて、童心に帰れました。大人の作品の発するメッセージも、文字や口頭のことばとは異なり、ほんわか、じわり伝わり、刺さる感じ・・・。奥深いです。

#聞きます #やります #やり遂げます

先見と行動

山神 ゆたか

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