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「2040年 生き残る自治体(著者:小西砂千夫氏)」を読みました。奈良県での実際の取り組みを引き合いに、小規模自治体の生き残り策に関する見解を述べられたものです。神奈川県と単純に比較することはできないかもしれませんが、日本の将来を見通せば、参考になる、そして考えさせられる一冊でした。

<連携が不可避>

同氏の主張を要約すると、

  • 高齢化が進み、人口減少が進んだ2040年の状態を思い浮かべると、中山間地域の市町村は基礎自治体としての役割を果たすことが相当困難になる。
  • 市町村合併は少なくとも政府が推進するという意味では“平成の大合併”で一段落した。
  • 小規模自治体が生き残るには、広域連携が不可避となる。
  • 大都市圏で核となる都市が多く存在する地域での連携は、市町村間の水平連携が主たる手段となる(水平補完)。
  • 核となる都市がない地域では、市町村が頼るべきは都道府県にならざるを得ない(垂直補完)。

県は違えど、足柄地域でも抱えている課題は共通しています。将来を見通せば、参考にすべき内容であると感じました。

<県市町村の連携>

ただ、実際には県を交えた市町村との連携の事例は奈良県が本格的に実践している以外は、秋田県と静岡県、高知県で僅かに見られる程度で全国的にはほとんどないとのこと。

奈良県の場合は荒井知事のリーダーシップの下、2008年に具体的な検討に入り、市町村長サミットを定期的に開催し、知事と直接意見交換を重ねる中で、多くの分野で連携が実践されることとなりました。

<奈良モデル>

奈良県において実際に行われている連携の事例としては、

  • 市町村管理の道路や橋りょうの点検や長寿命化修繕計画の策定と県が受託
  • 市町村の税徴収業務に県職員を派遣、もしくは協働で徴収
  • 市町村の水道事業を県営水道に転換・一体化
  • 公立病院の再編整備

他にも、医療・介護サービス体制や、国民健康保険、広域消防、ごみ処理の広域化、交通サービスなど様々な分野で、県が当事者となって連携に参加している事例が紹介されていました。

知事の見解としては、「県が入ると連携に弾みがつく」、「県は上からではなく、下から支えるという機能を果たした方がいい」とのこと。興味深いコメントとして、「合併がちらついてしまうと連携が途端に動かなくなる」と述べられていました。経験則に基づく当事者の実感は重いです。

道州制や近隣府県との連合には否定的で、小規模自治体の声が届かなくなる、見捨てられる恐れがあるとのお考えでした。

<最後に>

全国的にこのような動きが広まっていないのも、自治体行政業界ならではのわけがあるということでしょう。ただ、奈良県では、財政的な支援にとどまらず、人材の補完や、ハード/ソフト両面での効率的且つ効果的なシェアリングの効果はコスト削減を含めて実際に出ているとのこと。ひとつの解であり、いずれ追随する道府県が出てくる可能性はありそうです。

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先見と行動

山神 ゆたか

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