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茨城県境町。人口2.4万人、面積46㎢。日本で唯一、自動運転バスが定時運行している町。
同町の(株)さかいまちづくり公社の野口代表からお話を伺い、私が目指すべきまちづくりの像がより明確になりました。
この町の行政運営に関して、学ぶべきかつ参考にすべきことは確実に、かつ沢山あります! 特に、意思決定の“スピード感”とGOと決めたら突き進む“強い推進力と実行力”、それらを先導する“リーダーシップ”は見習いたく、少しでも近づきたいと感じました。
前回は、“異常なスピード感”に驚いたことをお伝えました。今回は、数々の驚愕の取り組みの極一部を、是非とも参考にしたい! 是非私も開成町において取り組んでみたい事例として、お伝えします。
地域優良賃貸住宅
まず結論から先に申し上げますと、境町では地域優良賃貸住宅を4棟建設し、すべて満室で稼働中です。
なぜ、是非とも参考にしたいのか? ポイントは3つあります。
一つ目は、民間企業のノウハウや資金を活用していること(所謂“PFI事業”)。
二つ目は、町の持ち出しがゼロであること。
三つめは、その目的通りに、移住者を獲得していること、です。
公営住宅と地域優良賃貸住宅
公営住宅は“真に住宅に困窮する者に公平かつ的確に提供する賃貸住宅”と定義され、地方自治体が事業主体になります。
一方、地域優良賃貸住宅は、高齢者世帯や障がい者世帯、子育て世帯などに対して提供する賃貸住宅“です。事業主体は、地方自治体や公社など公的機関以外に民間企業も事業を行える点が公営住宅と異なります。
どうやったら町の負担がゼロになるのか?
事業方式はBTO(Build Transfer Operate = 民間事業者が施設を建設し、完成後に自治体に所有権を移転し、民間事業者が維持管理と運営を行う方式)です。町の負担がゼロ! どういう仕組みでしょうか?
・建設費の45%は国からの社会資本整備総合交付金が充当されます。
・残りの55%は民間事業者が資金を調達して、住宅を建設します。
・住宅の所有権を有する町は、家賃収入の中から建設費と維持管理費を30年間で分割して民間事業者に支払う、
という仕組みです。
この仕組みが成り立つためには、民間企業が建設費と維持管理という債権を回収するに際して、自治体の信用力の高さはあるにせよ、町に30年間の期間を与えていること(期限の利益)がひとつのキーポイントだと思います。
町としても、その民間事業者への支払い原資である家賃をいくらに設定するかによって、政策意図を反映させることが可能となりましょう。移住者を確実に呼び寄せるためには、町の持ち出しになる可能性はあるものの、市場相場比より安く設定することになるでしょう。
3棟完成時点での移住者は122名
境町の場合は、入居の対象(条件)を子育て世帯と新婚世帯とし、“町外から転入する世帯を優先”しています。結果的に、3棟が供用開始された時点で、122名の方が町外から移住しました。そのうち20%が県外からの移住となっています。
人口約2.4万人の町で100名を超える移住者を、30年間という長期の事業ではあるものの、持ち出しゼロで獲得できる仕組み。勿論、職員の人件費等はかかっていますが、費用対効果は非常に高いと言えましょう。さらに、境町の場合は、避難所機能や再生可能エネルギー発電設備の設置なども付加されており、その効果はさらに大きいとも言えます。
開成町では
開成町では、町営住宅は3団地のうち1団地がすでに供用停止、残り2団地も築40年を超え、統廃合が検討されている状況です。この地域優良賃貸住宅の実績はありません。
人口が増えている自治体である上、町営住宅の統廃合を進めている中で、敢えて移住を促すために、新たな“公営”の住宅を建設する意義が認められていないのかもしれません。しかし、この持ち出しゼロのスキームであれば、且つその対象を高齢者世帯や障がい者にも拡げることによって、その意義は十分に認められるものと思います。
事例は全国で37件
因みに、同様の仕組みを活用した事例は全国で37件(令和3年1月時点)。
全国初の事例は、2014年の神奈川県山北町です!ただ、それ以降8年間で37件は、伸びていないと言えます。その原因が、人口減少や、公共施設を縮小する動きの中で、そもそも公営の住宅自体が増やせないのか、交付金の予算が足りないのか、取り組む民間事業者が少ないのか、もう少し調べてみます。
※ 国交省による概要説明はこちらから
※ 全国地域PFI協会による概要説明はこちらから
ぶっ飛んでる町・境町シリーズ、次回に続きます。
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先見と行動山神 ゆたか
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