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『ふくし座談会』シリーズの最終回です。高齢化率や要介護認定率の話を伺う中で、地域での助け合いの重要性を再認識した上で、そもそも健康寿命を伸ばすに、どのような策が考えられるのか?に興味が及びました。
現時点ですでに様々な取り組みがなされていることは十分承知していますが、あれこれ探っているうちに、内閣府の“政策課題分析シリーズ”の「要介護(要支援)認定率の地域差要因に関する分析」なるものに出会いました。
所謂、“証拠に基づく政策立案(EBPM)”によるアプローチです。何が要介護(要支援)認定率と相関関係が高いのか? そこからどのような政策が有効と考えられでしょうか?
※「要介護(要支援)認定率の地域差要因に関する分析(平成30年4月。内閣府政策統括官)」はこちらから
人口構成
認定率は75歳を超えると急上昇することが分かっており、この分析においても“高齢者人口に占める75歳以上の人口比率” (80歳以上、85歳以上、90歳以上の比率も同様)が高い相関関係を示しています。“65歳以上の人口に占める75歳以上の人口の比率が高い都道府県ほど、認定率が高い”というデータが示されています(正の相関関係)。
ただ、それよりも高い相関関係を示すものがありました!
スポーツ行動者割合
いきなり聞きなれない用語が出てきました。5年毎に実施されている社会生活基本調査の中で、“各種スポーツを、過去1年間に、どのくらい行ったか”を調査し、男女年齢別に公表しているもの”でした。
要介護認定率との相関関係が最も高いのは、この“スポーツ行動者割合”でした(2015年。都道府県別)。具体的には、“75歳以上のスポーツ行動者割合”との相関係数が0.84で最高でした。75歳以上のスポーツ行動者割合が高い都道府県ほど、認定率が低いということを意味します(負の相関関係)。
45歳以上の10歳毎の各年齢層においても相関関係は極めて高く、データは、“年齢に関係なく、運動する人の割合が高いほど、認定率が低いこと”を示唆しています。
参考まで、75歳位以上の高齢者のスポーツ行動者割合の全国平均は49.6%です(2016年の調査)。
種目(複数回答あり)としては、ウォーキングなど軽い運動38.3%、器具を使ったトレーニング7.9%、ゴルフ4.3%、登山・ハイキング4.1%、ゲートボール2.3%、つり2.2%、水泳2.2%、サイクリング2.1%となっています。
調査から6年が経過している上、コロナ禍という異常事態に陥ったこともあり、直近のデータはまた異なるものとなっていると思います。ただ、“運動・スポーツ”が認定率を下げる効果が最も高い、すなわち、絶対と言える根拠はここではありませんが、健康寿命を伸ばす効果も一番高いことが示唆されます。
パークゴルフの町
開成町にはうってつけのスポーツがあります。パークゴルフです。軽い運動として最適と思います。人と会い、話すことの効果もあります。過日のフレイル予防のセミナーでも、飯島教授は食事も運動も“誰と”がとても大事であることを強調されていました。
開成町のパークゴルフ協会は会員の減少に頭を悩ませていますが、この“データ”を勧誘ネタに使用しない手はないでしょう。
また、協会云々ではなく、エンジョイ志向の方々も楽しんでプレイできる、敷居を下げる仕組み作りも重要でしょう。
パークゴルフ以外にもスポーツの環境には恵まれています。まず、サイクリングコースがあります。酒匂川はアユ釣りのメッカでもあります。登山・ハイキングに関しても、箱根や丹沢が近いです。サイクリングやハイキングは同好会のようなグループを作ることで、輪も広がり、継続性が高まるかもしれません。
歩数はあまり関係ない?
運動は効果があることが示されていますが、“歩数”は相関係数が0.52と高くありません。前述の飯島教授も「フレイル予防において、歩くだけでは効果は乏しい」、「サルコペニア(筋肉減弱症)にならないためには、無理のない範囲で筋トレをすることが大事!」と仰ってました。
財政力による?
財政力指数との相関係数も比較的高く0.73でした。“財政力が高いほど、認定率は低い“(負の相関関係)となり、財政的な余裕があるため、必要な対策が打てているとの仮説はたてられるかもしれません。
一方で、人口10万人あたりの老人福祉費や一般病床数はそれぞれ0.78、0.73と高い相関関係を示しています。“老人福祉費が多い都道府県ほど、一般病床数が都道府県多いほど、認定率は高い“ということになります。元々認定率が高いため、費用がかかっている可能性や、病床の受入体制が整っているがゆえに利用者も多くなっている可能性もあり、詳細を調べないことには何とも言えません。
EBPM。限られた財源をできるだけ有効に使うために、今後、様々な分野でその重要性は増すでしょう。根拠のない政策は打ち出しにくくなると思います。また、データ・根拠が整備されるにつれて、成果連動型の官民連携も増えるという相乗効果も発揮されそうです。
あらためて、要介護認定率との相関関係が最も高いのは“スポーツ行動者割合”であることを念頭にフレイル予防や健康寿命の伸長に取り組んでいきたいです。
長くなりました。お付き合いいただき、ありがとうございました。
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先見と行動山神 ゆたか
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